腎癌(読み)じんがん

百科事典マイペディア 「腎癌」の意味・わかりやすい解説

腎癌【じんがん】

腎臓にできる(がん)で,比較的高齢者に多く,男性は女性の2〜3倍の発生率がある。1997年の腎癌による死亡者は3520人。 血尿,腎臓の痛み,腹部腫瘤(しゅりゅう)が三大症状だが,ほとんどの場合,このどれか一部の症状が現れる。鎮痛薬フェナセチン常用者に腎盂癌の多いこともわかっている。 最近では,無症状で偶然発見される場合も増えている。臨床的な検査では,赤沈赤血球の沈降する速度)が上昇する,血清タンパクの異常,肝機能障害などの結果が出ることが多い。腎盂造影,CTスキャン超音波血管造影検査などによって診断を行う。 根治するには手術による腎臓摘出しかない。腎盂癌であれば制癌薬のシスプラチンなども有効だが,それ以外では制癌薬を使っても生存率は向上しない。遺伝子治療も行われたが,あまり効果はなかった。一部では性ホルモン療法,免疫療法インターフェロン投与も有効である。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

改訂新版 世界大百科事典 「腎癌」の意味・わかりやすい解説

腎癌 (じんがん)
renal cancer

腎臓の尿細管上皮細胞から発生する悪性腫瘍で,副腎腫hypernephroma,あるいはこれを記載したドイツの病理学者グラウィッツPaul Grawitz(1850-1930)にちなんでグラウィッツ腫瘍Grawitz's tumorなどと呼ばれたが,最近は腎癌と呼ばれている。高齢の男性に多く,血尿,側腹部腫瘤,疼痛が古くから本症の三大主徴とされている。腫瘍は握りこぶしくらいのものから子どもの頭くらいの大きさに及ぶものまであり,血管に富んだ腫瘍からの出血による血尿,腫瘍の圧迫による腰痛や側腹部痛が起こる。このほかにも発熱,体重減少,脱力,食欲減退,貧血などの全身症状がみられることが少なくない。肺,肝臓,骨などに転移を起こしやすく,咳(せき)や骨の痛み,あるいは骨折などで初めて発見されることもある。診断には尿路のCT検査,超音波検査や血管撮影が行われる。治療は早期に発見して手術的に腎臓を摘出するのが原則であるが,初期には自覚症状がないことが多い。手術療法とともにインターフェロンや抗癌剤の投与などを併用することが多いが,それでも完全治癒率は50%たらずで,一般に予後は不良である。しかし,最近は健康診断の超音波検査で無症状のうちに早期発見されることが多く,この場合の完全治癒率は90%以上である。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android