精選版 日本国語大辞典 「脱」の意味・読み・例文・類語
だっ‐・する【脱】
[1] 〘自サ変〙 だっ・す 〘自サ変〙
① ある物や、情況・境遇などから抜け出る。逃げて外に出る。
※史記抄(1477)一三「高祖はそばになって罪を脱したぞ」
② ある組織・仲間から出る。脱退する。
※東京日日新聞‐明治二四年(1891)三月二五日「宿老板垣伯〈略〉一たび立憲自由党を脱するに至れり」
※正法眼蔵(1231‐53)大修行「野狐を脱しをはりぬれば、本覚の性海に帰するなり」
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉四「この書余をして夢死より警覚せしめ、余を導て卑下の見識を脱せしめたり」
④ 漏れる。抜け落ちる。
[2] 〘他サ変〙 だっ・す 〘他サ変〙
※正法眼蔵(1231‐53)洗浄「褊衫および直裰を脱して、手巾のかたはらにかく」
※妙好人伝(1842‐52)初「時にこの小女(むすめ)死を軽んずること破れ草鞋を脱(ダッ)するがごとし」
② 込められているもの、つまっているものなどを、その中から抜く。
※内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉七「いつしか栓を脱(ダッ)せしと見え」
③ 特に、子を産み落とす。また、流産する。堕胎する。
④ (未完成の状態を出る意から) できあがる。終える。特に、原稿を書き上げる。
※読本・椿説弓張月(1807‐11)残「結局悉(ことごとく)稿を脱(ダッ)して、全本となれり」
⑤ 脱落させる。落とす。漏らす。
※史記抄(1477)四「必是は史記の本が字を脱したぞ」
[補注](二)③の意で、「読本・本朝粋菩提全伝‐一」には「いかほど月は満るとも子を脱(ダッ)す事奇妙にて」のような四段活用化したと見られる例がある。
ぬ・ぐ【脱】
※伊勢物語(10C前)六二「きぬぬきてとらせけれど、捨てて逃げにけり」
※大唐西域記長寛元年点(1163)五「象は鞍を解(おろ)さず、人は甲(かぶと)を釈(ヌ)がず」
[2] 〘自ガ下二〙 ⇒ぬげる(脱)
ぬが・す【脱】
ぬ・げる【脱】
〘自ガ下一〙 ぬ・ぐ 〘自ガ下二〙 身につけていた物が取れて離れる。衣服、履物などがからだからはずれる。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)二「ゑぼしのぬげるもかまはず」
だつ【脱】
〘語素〙 名詞の上に付けて、そのものから脱けだす、のがれるの意を表す。「脱社会」「脱文明」など。
だっ‐・す【脱】
〘自他サ変〙 ⇒だっする(脱)
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