脱色(読み)だっしょく(英語表記)decolorisation
decolorization

精選版 日本国語大辞典 「脱色」の意味・読み・例文・類語

だっ‐しょく【脱色】

〘名〙 色を抜くこと。色を消すこと。
(イ) 繊維製品や毛髪などから色を抜くこと。自然のままの色、染め色、汚染、その他不必要な色を脱色剤を用いて除去すること。また、その操作。
※鑑識捜査(1958)〈遠藤徳貞〉九「毛幹の構造をみるには、色素をとるため三%の過酸化水素液の中につけて脱色する」
(ロ) 着色物から色を除去すること。また、その操作。
※逓信省令第六一号‐明治三六年(1903)一二月一七日(法令全書)「私製葉書表面には脱色せざる印肉を以て」
(ハ) 油脂の精製で、濃い色の原油から色を除去して淡い色の油にすること。また、その操作。
※東京大正博覧会出品之精華(1914)〈古林亀治郎〉五「化学作業を以て脱臭脱色を為し」

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デジタル大辞泉 「脱色」の意味・読み・例文・類語

だっ‐しょく【脱色】

[名](スル)本来含んでいる色や染め色をぬきとること。「髪の毛脱色する」
[類語]漂白色抜き染み抜き

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改訂新版 世界大百科事典 「脱色」の意味・わかりやすい解説

脱色 (だっしょく)
decolorisation
decolorization

化学製品の精製工程,天然繊維や合成繊維の漂白工程,染色物の脱色加工工程,あるいは食品の製造工程などで有色物を除去することにより商品価値を向上させる必要がしばしばある。また家庭においても衣料品の汗や汚れで着色した汚点を除きたいことがある。このような望ましくない有色物を除去する操作を一般に脱色という。脱色には,有色物を吸着して除去する物理的な方法と,化学的に変化させて除去あるいは無色化する化学的方法がある。

化学製品に含まれる有色不純物を除く方法として,固体の吸着剤,たとえば活性炭活性白土,酸性白土,ゼオライトなどを用いることが多い。精製工程としては目的物を水溶液あるいは有機溶媒による溶液とし,これらの吸着剤を少量加えて着色不純物を吸着させ,次にろ過する。必要に応じて溶液を加熱して能率を高めることもよく行われる。この場合,着色不純物は一般に目的物より分子が大きく吸着されやすい性質を利用している。具体例を挙げれば,粉末活性炭を用い,油脂,ビタミン,抗生物質,アルカロイドなどの医薬品,染料中間物,グルタミン酸ナトリウムなどの工業薬品の脱色がこの方法で行われる。

物理的な吸着による脱色法は多くの食品にも用いられ,たとえば粗製の黒褐色の砂糖を白色の精製糖に変えたり,粗製の動物油,食物油を脱色精製油としたりする。化学的脱色法は有色物質を酸化剤(あるいは還元剤)でより分子の小さな無色物質に化学的に変化させることによる。
食品漂白剤

天然繊維も合成繊維も初めは多少の色がついているので漂白の必要がある。木綿,麻,人絹,スフなどのセルロース繊維の漂白には,さらし粉,次亜塩素酸塩,亜塩素酸塩などの塩素系酸化漂白剤を用いる。あとで十分脱塩素をしないと,繊維が傷むし時間がたつと黄ばむことがあるので,近年工業的には過酸化水素水を用いることが多い。なおその際,蛍光増白剤を併用し増白効果を向上させることが行われる。羊毛や絹などの動物繊維を漂白するには,還元性のハイドロサルファイト亜ジチオン酸)や酸性亜硫酸塩,または酸化性の過酸化水素や過ホウ酸塩を使うことが多い。合成繊維は一般に化学的に安定であるので大抵の漂白法が用いられるが,とくに亜塩素酸塩による酸化漂白,ハイドロサルファイトによる還元漂白が行われる。

染料は繊維に対し結合方式は多様だがかなり緊密に結合しているのが普通なので,その脱色には一般に化学的に処理し染料分子の構造を変え無色のものにする漂白法が選ばれる。その際,繊維を傷めてはならないので前記の〈繊維製品の漂白〉で述べた注意が必要となり,セルロース繊維の染色物の脱色には酸化漂白法が,動物繊維の場合にはアルカリ漂白法が採用されるのが普通である。染料の種類として,直接染料,酸性染料ナフトール染料,分散染料などに使用されるアゾ染料は,酸化・還元漂白のいずれの方法でも比較的容易に分解され脱色される。これに対し,酸性染料,建染染料,分散染料などに用いられるアントラキノン染料は一般的に酸化剤に対しては強く,還元剤には還元されてロイコ化合物を生成するが,空気中では酸化されてもとの染料に戻るので脱色は困難である。染色物を家庭内で脱色するには次の方法がよい。セルロース繊維の染色物の場合,さらし粉の0.7~1%水溶液に数時間常温ないし加熱して浸漬する。これで脱色できないときは,ハイドロサルファイト0.7~1%水溶液で20~30分煮沸する。動物繊維は同様にハイドロサルファイト水溶液で煮沸するか,0.5%過酸化水素水にアンモニア水を少し加えたもので50℃まで加熱してみる。以上の方法で脱色できないときは家庭内では無理と考えるほうがよい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「脱色」の意味・わかりやすい解説

脱色
だっしょく
decolorization

着色液の色を除く処理をいう。油脂の脱色精製は、活性白土(フーラー土、酸性白土のような含水ケイ酸アルミニウムを主成分とする天然漂白土などを硫酸などで処理して活性化したもの)、活性炭(値段が高く単独では使用されない)のような優れた吸着剤、あるいは酸化・還元作用を有する化学薬品により行われる。ただし化学的方法は食用油脂に適用できず、一般に工業用製品に限定される。そのほか加熱、光線、液化溶剤抽出法などがある。石油精製においても、脱色に白土が吸着剤として用いられる。活性白土は天然漂白土よりも値段が高く、また廃白土中に油を含むために油の損失が大である。しかし活性白土は、天然漂白土よりも効力が勝り、かなりの量の遊離脂肪酸を含む油脂にも十分用いうる。活性白土は約120℃で使用され、現在一般に減圧脱色が行われる。これは、脱色操作中に油脂が大気中の酸素により酸化されて変質するのを抑制するためである。

[福住一雄]

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化学辞典 第2版 「脱色」の解説

脱色
ダッショク
decolorization, bleaching(油脂)

一般に,着色液の色を除く処理をいう.通常,対象物により適当な脱色剤を用いる濾過法で行われ,陽イオン交換樹脂による水の脱色,陰イオン交換樹脂による砂糖溶液の脱色,活性白土による油脂や石油留分の脱色,活性炭による各種液体の脱色など,化学工業では種々の脱色処理が行われる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「脱色」の解説

脱色

 食品の色を除く操作.吸着,漂白などによる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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