脊髄血管性疾患(読み)せきずいけっかんせいしっかん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「脊髄血管性疾患」の意味・わかりやすい解説

脊髄血管性疾患
せきずいけっかんせいしっかん

脊髄に虚血や出血をおこす血管障害の総称であり、虚血性(閉塞(へいそく)性)脊髄血管障害と出血性脊髄血管障害とに大別される。脊髄への血液供給は複雑で、前脊髄動脈は脊髄の前約3分の2の部分を支配し、後脊髄動脈は後ろ約3分の1の部分を支配しているが、ともに頸髄(けいずい)では椎骨(ついこつ)動脈の分枝であり、胸髄・腰髄では下行大動脈から出た分節動脈(肋間(ろっかん)動脈、腰動脈)の分枝でありながら、互いに直接連絡することはない。

 脊髄の血管障害は脳の場合と異なり、動脈硬化を基盤とする血栓や高血圧性出血は少なく、むしろ虚血性脊髄血管障害では下行大動脈の剥離(はくり)性動脈瘤(りゅう)や脊椎の病気、腫瘍(しゅよう)などによって脊髄の動脈が圧迫されたりしておこることが多くみられ、また出血性脊髄血管障害では脊椎や脊髄の外傷と脊髄血管腫によることが多い。

 血管性疾患で脊髄が障害されると、通常、弛緩(しかん)性麻痺(まひ)(四肢麻痺)、障害レベル以下の感覚障害が急激に出現し、引き続いて尿閉屎尿(しにょう)の失禁をきたす。虚血性脊髄血管障害では、しばしばこのような症状一過性に前駆したり、背中や腰の痛みが先行する。好発部位は胸髄で、前脊髄動脈領域におこりやすい。慢性期になると麻痺は痙(けい)性となり、種々の脊髄横断症状がみられる。

[海老原進一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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