脂肪吸引手術(読み)しぼうきゅういんしゅじゅつ

百科事典マイペディア 「脂肪吸引手術」の意味・わかりやすい解説

脂肪吸引手術【しぼうきゅういんしゅじゅつ】

自分の希望する体型にするために,痩せたい部分の脂肪を吸引する痩身法。1972年にフランスの医師が初めて行って以来,日本でも美容外科や形成外科などで実施されている。 手術方法は,まずは脂肪を取るところにマーカーをつけ,金属製の細い管(カニューレ)を足の付け根や臍(へそ)などの目立たない部分から差し込み,少しずつ脂肪を吸引していく。局所麻酔による日帰り手術が一般的である。健康保険は適用されず,手術料金は病院や吸引する身体の部位によって差があるが,たとえば腹部なら20万〜100万円程度。 希望者は20代〜40代の女性に多く,脂肪を取りたい部分は20代前半が頬(ほお),20代後半は脹脛(ふくらはぎ),太腿(もも),臀部(でんぶ)(尻),30代〜40代は腹部といった傾向がある。中年男性が腹部の脂肪を取るケースもある。 ダイエットよりも簡単に,不要な脂肪だけ取れる方法と宣伝されているが,手術中の出血もあり,死亡した例もある。1996年6月には,大阪府の主婦(当時41歳)が美容クリニックで腹部などから合計5900gの脂肪を取る手術を受け,3日後に壊死(えし)性筋膜炎などで死亡した。脂肪吸引手術では1回の吸引量は1200〜1500gが標準とされ,遺族らはクリニックの院長と担当医を相手取って,約2億円の損害賠償を求める訴えを起こした。1997年4月にも,広島市内の美容形成外科医院で,松山市在住の女性(当時38歳)が脂肪吸引手術後に容体が急変して死亡した。また,1996年2月には,1988年に受けた手術後に臀部がデコボコになったとして訴えを起こしていた女性(当時34歳)に対し,医院側から101万円を支払うように,東京地裁が判決を出した。→皮下脂肪

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