胸腔鏡下手術(読み)きょうこうきょうかしゅじゅつ

百科事典マイペディア 「胸腔鏡下手術」の意味・わかりやすい解説

胸腔鏡下手術【きょうこうきょうかしゅじゅつ】

内視鏡の一つで,胸部を見るための胸腔鏡を使って行う手術。腹腔鏡下手術に続いて米国で急速に普及した。 日本では,1992年に国立がんセンター中央病院・成毛韶夫(なるけつぐお)副院長が,初めて胸腔鏡下の肺癌(がん)手術に成功した。成毛医師は1997年,世界で初めて,左右の肺の上葉(肺のいちばん上の部分)を同時に切除する手術にも成功している。 全国で行われた胸腔鏡下手術は1994年に3862例,1997年には8326例と3年間で2倍以上に増えている。現在,自然気胸の肺嚢胞(のうほう)切除や,肺癌切除などに健康保険が適用されている。 手術方法は,胸に数ヵ所の穴を開けて,そこから入れた胸腔鏡によってテレビモニターで内部を映し出す。細長いメスや自動縫合器(切除と縫合を一度に行う機械)を穴から入れ,モニターを見ながら手術を行う。 肺癌の根治手術は,これまでは皮膚を70cmほど切り,肋骨を2本取って肺を切除するのが標準的なやり方であった。胸腔鏡下手術では手術後4〜5日で退院でき,社会生活に復帰してスポーツもできるなど,患者の負担がかなり軽くなった。 対象となる疾患は気胸や早期の肺癌,心臓病など。最近では,ヘリカルCTによってごく早期の癌も発見されており,さらには医師の技術向上器具改良によって,適用範囲が広がっている。 なお,心臓外科では低侵襲冠動脈バイパス術などに応用されている。 最近では,ドイツのメルセデス・ベンツ社が医師との共同プロジェクトで,通信衛星ロボットを介して遠隔地から胸腔鏡下手術を行う研究も進んでいる。→A-Cバイパス術
→関連項目内視鏡的治療

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

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