胡笳(読み)こか(英語表記)hú jiā

精選版 日本国語大辞典 「胡笳」の意味・読み・例文・類語

こ‐か【胡笳】

[1] 〘名〙
① 昔、中国北方の胡国の人の吹く笛。葦の葉で製したもの。〔李陵‐答蘇武書〕
篳篥(ひちりき)の別称。
※法性寺関白御集(1145か)羈旅月光明「燕筑一声郷外暁、胡笳四面客中秋」
[2] 琴の曲名。(一)①の調べを琴の曲としたもの。また、その曲に合わせて歌う歌辞
※宇津保(970‐999頃)内侍督「琴(きん)といふ物のこゑあまたなれど、なほこかなむ、あやしくあはれにおもほゆる」 〔劉商‐胡笳十八拍・第十八拍〕
[補注]「宇津保」の例は「源氏物語」の古注によって「五箇(ごか)」とする説もある。→「ごかのしらべ(五箇調)」の補注

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デジタル大辞泉 「胡笳」の意味・読み・例文・類語

こ‐か【××笳】

中国古代北方民族の胡人が吹いたという、あしの葉で作った笛。
琴の曲名。の調べを琴の曲としたもの。の国に長く捕らわれていた後漢蔡琰さいえんの作という。

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改訂新版 世界大百科事典 「胡笳」の意味・わかりやすい解説

胡笳 (こか)
hú jiā

中国のダブル・リードの気鳴楽器。箛(こ),葭(か),吹鞭の別称がある。大小2種あり羊角または羊骨製。前漢(前2世紀)に軍楽が制定されたとき,胡角(角笛の一種)とともに匈奴より入り,後漢(1世紀)以降,鼓吹(軍楽および王侯の行列音楽),また一般奏楽に使用された。宋の陳暘(ちんよう)(11世紀)は無孔とするが,魏・晋(3~5世紀)の《笳賦(かふ)》に音階名が見られ,《宋書》楽志に,漢代の《箏笛録》に胡笳の曲が存在したと述べてあり,有孔のものもあったが,九孔の篳篥(ひちりき)にやがて代わったと推測できる。日本で篳篥の別名に用いられることもある。辺塞の感じを表し哀怨を帯びているその音色は,漢の李陵の〈答蘇武書〉をはじめのちの辺塞詩などで詠まれた夜,月,馬のいななきなどのイメージと結びつく。後漢の蔡琰さいえん)《胡笳十八拍》はその音に感じてうたわれたという。また,〈君聞かずや,胡笳の声最も悲しきを〉で始まる唐の岑参しんじん)《胡笳歌》も有名。
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普及版 字通 「胡笳」の読み・字形・画数・意味

【胡笳】こか

あしぶえ。また、その曲。唐・岑参〔胡笳歌、顔真の使して河に赴くを送る〕詩 君聞かずや、胡笳の聲最も悲しきを 紫(しぜん)眼の胡人吹く 之れを吹きて一曲ほ未だ了(をは)らざるに 愁す、樓征戍の兒

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