胡禄(読み)ころく

改訂新版 世界大百科事典 「胡禄」の意味・わかりやすい解説

胡禄/胡籙 (ころく)

矢をいれて携帯する容器の一種。《東大寺献物帳》には(ゆき)と胡禄(やなぐひ)とを並記して区別している。これを遺品にあてはめて,矢筒式の容器を靱とし,矢立式の容器を胡禄と説明するのは,日本だけに通用する用語法である。中国で胡籙といえば,西安昭陵六駿石像(636)中の丘行恭像や楊思勗(ようしきよく)墓(740)出土の兵士石俑に見るような,矢筒式のものである。慣用にしたがって矢立式の容器を胡禄とすると,奈良時代の遺品は,木板製あるいは葛藤(つづらふじ)製の状差形で,長さ33~45cmあり,幅が12cm余の狭いものと,30cmに達する広いものとの2種がある。古墳時代の遺品は,日本各地や韓国南部から,前板の飾金具両側鉸具かこ)付金具が出土していて,それらが銀製あるいは金銅製であることから,華美なものであったと推測できるが,全形は武人埴輪の表現によって想像するほかはない。すなわち,矢は鏃を下方に向けて収め,右腰に垂下したものであった。
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世界大百科事典(旧版)内の胡禄の言及

【箙】より

…武具の一種で箭(や)を盛る調度。携帯用容器の種類としては,上代に用いられた靫(ゆぎ),胡籙(ころく)(胡禄),中世の胡籙(やなぐい),箙,空穂(うつぼ)などがある。箙は,〈やなぐい〉と同じように,飛鳥・奈良時代にもっぱら用いられた隋・唐伝来の〈ころく〉の形式を受け,武士が戦いに用いたものである。…

【箙】より

…武具の一種で箭(や)を盛る調度。携帯用容器の種類としては,上代に用いられた靫(ゆぎ),胡籙(ころく)(胡禄),中世の胡籙(やなぐい),箙,空穂(うつぼ)などがある。箙は,〈やなぐい〉と同じように,飛鳥・奈良時代にもっぱら用いられた隋・唐伝来の〈ころく〉の形式を受け,武士が戦いに用いたものである。形が蚕簿(さんはく∥えびら)ににているので,この名があるといわれる。古くは〈ころく〉とも,〈やなぐい〉ともよまれ,区別はされなかったようである(《三代実録》貞観16年(874)9月14日の条)。…

※「胡禄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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