胃けいれん(読み)いけいれん

家庭医学館 「胃けいれん」の解説

いけいれん【胃けいれん Gastric Cramp】

[どんな病気か]
 胃壁筋層(いへききんそう)(平滑筋(へいかつきん))のけいれん、すなわち異常な緊張によって、発作性の激しい上腹部痛をおこす状態です。管腔臓器(かんくうぞうき)の1つである胃の内臓痛ですが、一般には胃がけいれんしているかのような激しい上腹部痛を総称していいます。
 胃炎(いえん)、胃潰瘍(いかいよう)、胃がんなどの胃疾患や、十二指腸潰瘍(「消化性潰瘍(胃潰瘍/十二指腸潰瘍)」)、胆石(たんせき)症(「胆石症」)、急性慢性膵炎すいえん)(「急性膵炎」)などにともなって発症し、過度の精神的緊張や神経症によってもおこります。
 治療としては、まず、上腹部痛を抑えるため鎮痙薬(ちんけいやく)を使用します。自他覚症状や血液検査、X線検査、内視鏡検査などによって、原因疾患が診断、あるいは推察されるならば、それらに対する治療を加えます。また、精神安定剤を用いることもあります。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「胃けいれん」の意味・わかりやすい解説

胃けいれん
いけいれん

いわゆる胃けいれんとよばれるものは、心窩(しんか)部(上腹部、みぞおち)を中心とした激しい腹痛を総称したもので、しばしば悪心、嘔吐(おうと)を伴う。したがって、胃けいれんという疾患名はない。その痛みは、おもに胃、十二指腸、胆道、膵(すい)などの疾患によって生じたものが多く、痛みの部位とその性状からよばれたものである。このような痛みを呈する疾患としては、急性胃炎、胃潰瘍(かいよう)、十二指腸潰瘍、潰瘍の穿孔(せんこう)、胆石症、急性胆嚢(たんのう)炎、急性膵炎、急性虫垂炎(とくに初期)などがある。このうち、胆道疾患に基づくものがもっとも多いようである。いわゆる胃けいれんでは腹痛に対する対症療法を行うとともに、早急に前述のような疾患を鑑別する必要がある。

 なお、厳密には器質的疾患がなく、純機能的な胃の局所性れん縮をさし、噴門けいれん、幽門けいれんなどがあるが、この場合は、かならずしも痛みを伴わない。

竹内 正・白鳥敬子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「胃けいれん」の意味・わかりやすい解説

胃けいれん
いけいれん
gastrospasm

一般には,発作性の激しい上腹部痛をいうが,医学上は単に症状を表すだけのもので,特定の疾患を意味する用語ではない。臨床的には原因疾患をみつけることが重要である。多くは胃を包む筋肉の炎症 (胃周囲炎) が原因で,胆嚢炎や胆石症の症状の場合もあり,まれには十二指腸潰瘍の穿孔のこともある。胃は本来はじょうぶな臓器であるが,外部の影響などにきわめて鋭敏に反応するから,ストレス症状を起すことが多い。大部分は自然に痛みが消失するが,単純な鎮痛剤のほか,局所を暖めると,痛みをやわらげることができる。しつこい吐き気が続くときは,虫垂炎や十二指腸潰瘍に留意する必要がある。

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