家庭医学館 「肺胞たんぱく症」の解説
はいほうたんぱくしょう【肺胞たんぱく症 Pulmonary Alveolar Proteinosis】
肺胞とは、薄い壁に囲まれた小さな袋で、中には空気が入っています。
肺胞の壁には細い血管があり、肺胞中の空気に含まれる酸素をこの血管を流れる血液に取り込むとともに、血液中の二酸化炭素を肺胞の中に取り出しています。
すなわち肺胞は、呼吸という、人間の生命活動になくてはならないたいせつなガス交換が行なわれる袋なのです。
肺胞たんぱく症は、この肺胞の中にたんぱく質のような物質がたまって、ガス交換が障害される、まれな病気です。
進行すると、せきやたんが出たり、からだを動かしたとき(労作時(ろうさじ))に息苦しいという症状が出てきます。
[原因]
このたんぱく質のような物質は、実際は、たんぱく質とある種の脂肪(リン脂質)からできており、肺胞の壁を構成するⅡ型細胞という細胞が、肺胞の中につくり出すものと考えられています。
しかし、なぜこのようなものがつくりだされるかという原因については、今のところ不明です。
[検査と診断]
胸部X線写真を撮ると、微細な粒状の影が肺全体にみられます。
この部分の気管支にファイバースコープを挿入して、生理的食塩水で洗浄すると、米のとぎ汁のような白く濁った液が回収され、診断が確実になります。
[治療]
この病気の4分の1から3分の1は自然に治ります。そのため、症状のないときは、注意深く、そのまましばらく経過を観察します。
症状があるときは、全身麻酔をかけて、カーレンスチューブという管を使って肺胞を片方ずつ数回、生理的食塩水で洗浄し、米のとぎ汁のような液を取り去ります。
これが成功すると、肺はきれいになり、再び病気が生じることは少ないようです。