日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
肘関節(ちゅうかんせつ)
ちゅうかんせつ
いわゆる肘(ひじ)の関節で、上腕と前腕との間にある。肘関節は、3種類の関節が共通の関節包に包まれて構成される。関与する骨は、上腕骨の下端と橈骨(とうこつ)および尺骨の上端、それに橈骨上端と尺骨上端との間につくられる次の関節である。
(1)腕尺関節 上腕骨下端の滑車と尺骨の滑車切痕(せっこん)との間にできる関節で、肘関節の運動の中心的関節である。この関節で屈伸運動が行われる。
(2)腕橈関節 上腕骨下端の上腕骨小頭と橈骨上端の関節窩(か)との間にできる関節で、屈伸運動とともに前腕の回旋運動を行う。
(3)上橈尺関節 橈骨上端の関節環状面と尺骨上端の橈骨切痕との間にできる関節で、前腕の回旋運動(回外、回内)を行う。
これらの関節を運動形式からみると、腕尺関節はいわゆる蝶番(ちょうつがい)関節、腕橈関節は球関節、上橈尺関節は車軸関節である。
肘関節は、その構造によって、上腕骨の長軸延長上には尺骨の長軸はこない。すなわち、前腕軸はやや外方に偏している。上腕軸と前腕軸とがつくる角度を肘角(ちゅうかく)といい、正常では160~170度である。子供や女性では、肘関節を伸展すると、関節の部分で前腕が後方に反ることが多い。これは尺骨の肘頭(尺骨上端、肘の突出した部分)の発育が弱かったり、小さい場合におこる。
[嶋井和世]