肉付(読み)にくづき

精選版 日本国語大辞典 「肉付」の意味・読み・例文・類語

にく‐づき【肉付】

〘名〙 (「にくつき」とも)
① 肉が付着していること。肉をつけたままであること。また、そのもの。
浮世草子好色一代男(1682)六「右のかたの違棚の下に肉つきの爪数をしらず」
身体の、ふとったり痩(や)せたりしている程度。からだの肉のつきぐあい。ししつき。
あめりか物語(1908)〈永井荷風〉酔美人「兎に角肉付の可い若い女を見るのは非常に愉快なものだ」
③ 肉についているところ。根元
読本椿説弓張月(1807‐11)前「左右の角を拖(ひきつかみ)て、右手へ撲地(はた)と捻伏給へば、角は根(ニクツキ)よりほきと折れ」

にく‐づけ【肉付】

〘名〙
① 肉をつけること。ひととおりの構成がすんだところに、細部にわたって手を加えて厚みのある内容にすること。文章や話の筋などを、さらにくわしく、具体的にすること。
※竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生とその兄弟「能でさへよく見れや全然必要なものばかりで出来てやしない。やっぱり肉附けがある」
彫刻で、できあがった基本形に肉をつけること。また、絵画で、陰影などを施して人体の丸みを出すこと。モデリング
他人の顔(1964)〈安部公房〉黒いノート「頭蓋骨の上に肉づけをして行き、生きていたときとそっくりの容貌を再現してみせる」

しし‐づ・く【肉付】

[1] 〘自カ四〙 体がふとる。肉がつく。肉づく。
※醍醐寺本遊仙窟康永三年点(1344)「白骨再び肉(シシツキ)、枯(か)れたる樹(き)、重花(はな)さかむ」
[2] 〘他カ下二〙 体に肉をつける。ふとらせる。転じて、ふとらせるための餌とする。
※大唐西域記長寛元年点(1163)序「骨を豺狼の吻(くちさきら)に宍(シシツク)

しし‐つき【肉付】

名語記(1275)五「人の形体、ししつきのふはふはと、ふはみたりといふ」
※高野聖(1900)〈泉鏡花〉一六「衣服(きもの)を着た時の姿とは違うて肉(シシ)つきの豊な、ふっくりとした膚(はだへ)

にく‐づ・ける【肉付】

〘他カ下一〙 にくづ・く 〘他カ下二〙 骨格、骨子のできているものに別の物をつけて、内容のあるものとする。大体の構成ができている考えや文章などの細かい点、足りない点を補って豊かにする。肉をつける。肉付けする。
※帰省(1890)〈宮崎湖処子〉六「叔父は隠居職の一事として、放大なる団扇(うちは)の骨に紙を肉づけつつありき」

にく‐づ・く【肉付】

[1] 〘自カ五(四)〙 肉がつく。身体がふとる。ししづく。
※諷誡京わらんべ(1886)〈坪内逍遙〉五「手足も人並には肉附(ニクヅ)きたり」
[2] 〘他カ下二〙 ⇒にくづける(肉付)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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