聞書(読み)キキガキ

デジタル大辞泉 「聞書」の意味・読み・例文・類語

きき‐がき【聞(き)書(き)】

[名](スル)
人から聞いて、その内容を書きとめること。また、そのようにして書いたもの。「民話聞き書きする」
叙位任官理由などを書いた文書
「源以仁、頼政法師父子追討の賞とぞ―にはありける」〈平家・四〉

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精選版 日本国語大辞典 「聞書」の意味・読み・例文・類語

きき‐がき【聞書】

〘名〙
① 人の話を聞きながらその内容を書きとめておくこと。また、そうして書いたもの。
申楽談儀(1430)序「位のぼらば自然に悟るべき事とうけ給はれば、聞がきにも及ばず」
仮名草子浮世物語(1665頃)四「野夫(やぶ)医者のありけるが〈略〉只聞書ばかりにて療治をする」
記録一種。直接、または間接に人から聞いたものを書きしるした文書や記録。
※申楽談儀(1430)別本聞書「是より末は聞書の外題にて」
③ 叙位、任官の結果やその事由について書きつけたもの。
※中右記‐元永二年(1119)一一月二八日「今朝披見聞書之処、三位中将有仁任権中納言
※高野本平家(13C前)四「源茂仁、頼政法師父子追討の賞とぞ除書(キキガキ)にはありける」

きき‐しょ【聞書】

〘名〙 香道で、組香の組み方、つまり香木香包用意仕方と、香の(た)き方、連衆の答え方、記録の取り方などを説明した書。

もん‐じょ【聞書】

〘名〙 =ききがき(聞書)
※金刀比羅本保元(1220頃か)上「聞書(モンショ)には、『〈略〉』とぞ記されける」

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改訂新版 世界大百科事典 「聞書」の意味・わかりやすい解説

聞書 (ききがき)

(1)明治以前の朝廷で,任官叙位の際,昇進者とその理由とを記した文書の呼び名。昇進会議の備忘録。(2)近世の記録の一種。関係者から直接聞き筆記したものと間接的に伝え聞いて筆記したものとがある。前者には,師匠講説を速記したもの,要約して書いたものなどある。中世では講説の筆記は抄物(しようもの)と呼ばれ,当時の口語を探るうえで貴重とされるが,近世ではていねいに筆記しすぎると,〈先生コヽニ於テ一咳ス〉まで書き留める態度として嘲笑された。関係者から直接聞き筆記したものは史料的価値も高いが,しばしば聞書と称して巷間の伝聞を集めたにすぎないものも多く,筆者の素性・立場を明らかにすることが先決になってくる。尾張国清須春日村柿屋喜左衛門が祖父の談を筆記した《祖父物語》,大坂の陣で後藤又兵衛配下の長沢九郎兵衛筆記の《長沢聞書》,金沢藩主前田利家の談を筆記した《利家夜話》など,書名もいろいろである。
覚書
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「聞書」の意味・わかりやすい解説

聞書
ききがき

(1) 他人から聞いた事柄をそのまま筆記した記録で,打聞 (うちぎき) ,紀聞 (きぶん) ともいう。覚え書の対。一般には仏教の講話 (法語) の聞書をさし,特にそのうち国文体の仮名法語をさす。庶民に話しかけた言葉であるため,当時の口語資料となりうるものである。 (2) 叙位任官の理由を書いたもの。

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