聞・聴(読み)きく

精選版 日本国語大辞典 「聞・聴」の意味・読み・例文・類語

き・く【聞・聴】

〘他カ五(四)〙
① 音、声、言葉などを耳に感じとる。耳にする。
万葉(8C後)一八・四〇八九「鳴くほととぎす〈略〉夜渡し伎気(キケ)ど 伎久(キク)ごとに」
古今(905‐914)仮名序「花に鳴くうぐひす、水にすむかはづの声をきけば」
② 音や言葉を耳にして、その内容を知る、そうだろうと思う。また、言伝え、うわさなどを耳にする。
古事記(712)下・歌謡「そらみつ 大和の国に 雁(かり)卵産(こむ)と いまだ岐加(キカ)ず」
徒然草(1331頃)一一二「明日は遠国へおもむくべしときかん人に」
③ 人の言葉に従う。承知する。聞き入れる。
※万葉(8C後)三・三六九「もののふの臣(おみ)の壮士(をとこ)は大君の任(まけ)のまにまに聞(きく)といふものそ」
※竹取(9C末‐10C初)「是を聞て、ましてかくや姫きくべくもあらず」
※枕(10C終)八七「それを制して、きかざらん者をば申せ」
④ (答えを耳に入れようとして)人に尋ねる。考え、気持などを問う。
源氏(1001‐14頃)夕顔「君も今更にもらさじとしのび給へば、若君の上をだにえきかず」
方丈記(1212)「おのづから、事の便りに都をきけば」
※はやり唄(1902)〈小杉天外〉九「貴女だって、良心に問(キ)いたら能く解るでせう」
⑤ 是非を判断する。判断して処置する。
※ささめごと(1463‐64頃)下「我が句を面白く作るよりも、聞(きく)は遙かにいたりがたしといへり」
※読史余論(1712)一「此御代には院にて政をきかせ玉へば」
⑥ (「聞香」の訓読みからか) においをかぐ。
※名語記(1275)六「鼻に香をかぐもこのきく、同事也。聞香とかかれたり」
浄瑠璃・浦島年代記(1722)二「盃も手にとらじと、思ひ切ても酒の香きけば前後を忘るる」
⑦ (酒を)味わってみる。味を試して違いを知る。
※虎寛本狂言・伯母が酒(室町末‐近世初)「能い酒かあしい酒か私がきいて見ずは成ますまい程に」
⑧ 当てて試みる。釣り合いを見る。「板の厚さにきいて釘を打つ」

きき【聞・聴】

〘名〙 (動詞「きく(聞)」の連用形名詞化)
① 聞くこと。また、見聞
※万葉(8C後)四・六九七「吾が聞(きき)にかけてな言ひそ刈薦の乱れて思ふ君がただ香そ」
② (他人の聞くことの意から) 評判。うわさ。
※徒然草(1331頃)三八「誉を愛するは、人の聞をよろこぶなり」
③ 聞いた感じ。耳にした印象。
※万葉(8C後)一八・四〇八九「百鳥の 来居て鳴く声 春されば 伎吉(キキ)のかなしも」
④ (「利」とも表記) 酒などを味わい試みること。鑑定
※滑稽本・七偏人(1857‐63)初「よい御酒だ〈略〉私のききでは、泉川か滝水だらうとぞんじます」
⑤ 香道で、香をかぎあじわうこと。また、そのかおり。
耳底記(1602)三「名香をきく習は、蘭奢台を本にして、それよりはあさき、こき、あるひはききがなきなどと分別するなり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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