老眼
ろうがん
presbyopia
老視ともいう。目の焦点(ピント)合せを行っている水晶体の弾力性は年齢とともに低下してくるため、近くのものにピントが合わせにくくなって見にくくなった状態が老眼である。カメラではレンズが前後に移動してピントを合わせるが、水晶体は前面の曲率を変えることによってピント合せを行っている。すなわち、遠方を見るときには水晶体は薄くなり、近くを見るときには厚くなる。この働きは調節作用とよばれる。目の前どのくらい近くまでピント合せができるかという距離を調節近点といい、これによって調節作用の程度、すなわち調節力を表すことができる。この調節力はかなり若いうちからしだいに弱くなり、40歳を過ぎると調節近点は30センチメートルに近づいてくる。すなわち、40歳を過ぎて目の近くにあるものにピント合せができにくくなってくるのが、老眼の始まりである。このような状態になると、凸レンズの眼鏡をかけて調節力の不足を補うことになる。このような眼鏡が老眼鏡、あるいは読書眼鏡である。近視でも遠視でも、この調節力の年齢による低下は正視と同様におこってくるが、普段使っている眼鏡との関係で、実際に使う老眼鏡の度は近視では弱く、遠視では強くなる。近視では近視鏡を外すと、老眼鏡をかけたのと同じ効果が得られることもある。
老眼が始まったときに出てくる症状は、まず近くのものを見ていて急に遠方のものに視線を移したときにピントが合うのに時間がかかるようになることと、薄暗いところで細かい字が読みにくくなるということである。このような状態になったら、ためらわずに老眼鏡を使いだすのが目のためによく、またその後は3年に1回くらい老眼鏡の度を強めていく必要がある。しかし、70歳を過ぎると老眼が進行することもなくなる。
[松井瑞夫]
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ろう‐がん ラウ‥【老眼】
〘名〙
※菅家後集(903頃)秋晩題白菊「老眼愁看何妄想、王弘酒使便留居」 〔張耒‐当元祐二年再過宋都追感存没悵然有懐詩〕
③ 四五歳前後からあらわれる目の老化
現象。目の調節力が低下して近くのものが見えにくくなる。また、その目。老視眼。老視。
※俳諧・鸚鵡集(1658)一「老眼は空にしられぬかすみ哉〈如柳〉」
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老眼
加齢に伴って水晶体の弾力性が低下し、近くのものにピントが合わせられなくなる症状です。一般的には40歳程度から進行すると言われています。近視の人は 老眼にならない、というのは誤りで、全ての人が老眼になってしまう可能性を持っています。現在ではレーシックを行う医院でも日帰りで治療ができる老眼治療 が普及しはじめています。
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老眼【ろうがん】
老視とも。年齢が進むとともに,目の調節力が減退し,普通眼前30cmほど(明視距離)で行う読書,筆記などを遠ざけて行わねばならない状態。水晶体の外層が硬化し,弾性が衰えるためで,普通45歳ころから進行する。残存する調節力に応じて適度の凸レンズ(老眼鏡)を用いる。
→関連項目水晶体
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デジタル大辞泉
「老眼」の意味・読み・例文・類語
ろう‐がん〔ラウ‐〕【老眼】
1 年齢とともに目の水晶体の調節力が低下し、近くの物が見えにくくなること。また、その目。老視。
2 老人の目。
「―をしばたたきながら」〈菊池寛・忠直卿行状記〉
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ろうがん【老眼 presbyopic eye】
医学的には老視presbyopiaという。年をとって近くのものが見にくくなる現象。眼の調節機能が弱くなるため起こるもので,近視や遠視などの屈折異常とは異なったものである。屈折異常のない状態を正視というが,正視の眼では遠くを見るときに網膜にピントが合うようになっていて,近くを見るときには,毛様体筋という眼内の筋肉で,レンズの役目をする水晶体をふくらませて,網膜に焦点を合わせる。このように水晶体の厚さを変化させて必要な距離に焦点を合わせるはたらきを眼の調節という。
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普及版 字通
「老眼」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典内の老眼の言及
【屈折異常】より
… 調節力は年齢によって違い,子どもでは大きく,年をとるにしたがって小さくなる。中年になって,水晶体の弾性が弱まって,近いところを見るときに必要な調節ができなくなった状態を老視(一般には老眼)という。42~43歳で発生する人が多い。…
【目∥眼】より
…42~43歳になると調節に必要な水晶体の弾性が低下し,近いところを見るときに水晶体が十分に厚くならず,近くが見えにくくなる。これが老視(いわゆる老眼)である。調節が行われるためには神経が正常であるとともに水晶体の弾性も必要である。…
※「老眼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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