美保神社(読み)ミホジンジャ

デジタル大辞泉 「美保神社」の意味・読み・例文・類語

みほ‐じんじゃ【美保神社】

島根県松江市にある神社。祭神は事代主神ことしろぬしのかみ美穂津姫命みほつひめのみこと。漁業・海上の守護神で、4月7日青柴垣あおふしがき神事および12月3日諸手船もろたぶね神事は有名。

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精選版 日本国語大辞典 「美保神社」の意味・読み・例文・類語

みほ‐じんじゃ【美保神社】

島根県松江市美保関町美保関にある神社。旧国幣中社。主祭神は事代主(ことしろぬし)神、美穂津姫(みほつひめ)神。上代の創立で、青柴垣(あおふしがき)神事、諸手船(もろたぶね)神事、一年神主制度など特殊な祭祀形態を伝承。漁業の祖神、豊漁の神、海上の守護神などとして信仰される。えびす様。

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日本歴史地名大系 「美保神社」の解説

美保神社
みほじんじや

[現在地名]美保関町美保関

美保湾の西側、やや奥に鎮座する旧国幣中社。美保両みほりよう明神せきの明神と通称される。宝暦一三年(一七六三)の伯様御用覚(横山家文書)によれば、天文三年(一五三四)当時美保神社、天正一一年(一五八三)当時美保両社とよんだとある。「出雲国風土記」島根郡の美保社、「延喜式」神名帳に載る同郡美保神社に比定される。「雲陽誌」は三穂津姫と事代主神を祭神とするが、もとの祭神は御穂須須美命一神であったと考えられ、のち先の二神となった。記紀の国譲り神話が影響したものと考えられる。なお「出雲国風土記鈔」には「神御穂須須美命と御祖大穴持命及び御母努奈支智波比売命を合はせ祀りて三社大明神と曰ふ是なり」(原漢文)とある。中世は日本海水運と美保関の成立・発展に伴って、海上交通の守護神として大いに賑わったと推測されるが、永禄一二年(一五六九)八月の隠岐為清による美保関での反乱の際、社殿・宝物類などすべてが焼失したといわれ、現状ではこれを明らかにすることができない。隠岐為清の反乱については、「陰徳太平記」巻四三に「傍なる商家民屋共に火を放」ったと記され、同年八月二八日の立原久綱宛の尼子勝久感状写(「上月城」所収文書)には「隠岐孫三郎(為清)逆心之時(中略)至美保関寄掛切崩、雲州迄属本意候」とあることから、反乱は事実であったとみられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「美保神社」の意味・わかりやすい解説

美保神社
みほじんじゃ

島根県松江市美保関(みほのせき)町に鎮座。主祭神は事代主神(ことしろぬしのかみ)、三穂津姫命(みほつひめのみこと)。神話によれば事代主神は、父の大国主(おおくにぬし)神を助けて国土の開発と産業福祉の発展に尽くし、天孫降臨に際しては国譲りを進言し、自らは身を退き海中の青柴垣(あおふしがき)に籠(こも)り鎮まったという。三穂津姫命は五穀豊饒(ほうじょう)の女神と解される。この神社は早く奈良時代に中央にも知られ、国から毎年奉幣があった。美保関は古来有力な漁業基地で、日本海航路の発達に伴い重要な風待ち港となったことから、中世以降は武将による寄進や社殿の造営修復が相次ぎ、庶民の間にも豊作・豊漁・海上安全をはじめ、あらゆる商売・生産の守り神として信仰が普及した。事代主神が釣り竿(ざお)を手にし鯛(たい)を抱えた福徳円満なえびす様(七福神の一つ)として全国に親しまれているのは、この地で漁をした神話にもよるが、この神の広い神徳と美保関の史的条件に負うところが大きい。旧国幣中社。氏子には複雑な頭屋(とうや)制度が保存され、厳重な潔斎をして神事の準備や神饌(しんせん)の調理を行う。例祭は4月7日。特殊神事に、祭神が青柴垣に鎮まり神社が創立されたことを記念する青柴垣神事(4月7日)、天津神(あまつかみ)の使者が祭神と国譲りのことを議した神話にちなむ諸手船(もろたぶね)神事(12月3日)がある。本殿は比翼(ひよく)大社造(美保造)といわれ、国の重要文化財。ほかに重要有形民俗文化財として諸手船2隻、そりこ1隻、奉納鳴物(楽器類)846点がある。

[平井直房]

『和歌森太郎著『美保神社の研究』(1955・弘文堂)』


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改訂新版 世界大百科事典 「美保神社」の意味・わかりやすい解説

美保神社 (みほじんじゃ)

島根県松江市の旧美保関町に鎮座。三穂津姫(みほつひめ)命,事代主(ことしろぬし)神をまつる。三穂津姫命は大国主神の后神で,事代主神はその第1の子神。天孫降臨に先立ち,使者が出雲に降り,大国主神にこの国土を天神に献上するよう伝えたとき,事代主神はこの美保碕で釣をしていたが,父神の相談に対し献上すべく答え,自身は湾内海中に青柴垣(あおふしがき)を作り,それにこもったと神話に語られている。古くより漁業の祖神,海上守護とされるとともに,恵比寿(えびす)神として出雲大神とともに信仰された。延喜の制で小社。交通上の要衝にあることから中世には群雄の争う地となり,1570年(元亀1)兵火にあったが吉川氏により復興。現本殿は1813年(文化10)の造営であるが大社造変態の二殿連棟の古い様式を伝える美保造。旧国幣中社。例祭の4月7日当日には事代主神の故事に由来する青柴垣神事,12月3日に天神の使者が降って国土奉献を議したことにちなむ諸手船(もろたぶね)神事が行われるほか,特殊神事が多い。
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百科事典マイペディア 「美保神社」の意味・わかりやすい解説

美保神社【みほじんじゃ】

島根県美保関町(現・松江市)に鎮座。旧国幣中社。事代主(ことしろぬし)神をまつる。古来〈えびす・だいこく〉として出雲大社と併称される。延喜式内社とされる。漁業,農業,商業の神として広く信仰される。例祭は4月7日。この日,青柴垣(あおふしがき)神事がある。事代主神が国譲りの後,舟を踏みかたむけて,神去ったという故事に由来する。ほかに諸手船(もろたぶね)神事(12月3日)などがある。また本社の〈一年神主〉(頭屋(とうや))の制度は特異な祭祀制度の残存形態とされる。
→関連項目美保関[町]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「美保神社」の意味・わかりやすい解説

美保神社
みほじんじゃ

島根県松江市に鎮座する元国幣中社。祭神はコトシロヌシノミコト,ミホツヒメノカミ。例祭は4月7日。青柴垣神事,諸手船神事などの特殊神事で名高い。

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デジタル大辞泉プラス 「美保神社」の解説

美保神社

島根県松江市にある神社。「出雲国風土記」や「延喜式」にもある古社。江戸時代後期に建てられた本殿は国の重要文化財に指定されている。

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世界大百科事典(旧版)内の美保神社の言及

【一年神主】より

…一年神主の任務は,献灯・献饌や神殿・境内の清掃で,中には祝詞奏上さえ担当する例もある。島根県八束郡美保関(みほのせき)の美保神社の一年神主は,厳重な斎忌(さいき)に服し,神事に際しては人事不省に陥って託宣をくだすことで有名であった(《諸国里人談》)。それほどでなくても,特定人に潔斎を厳しく課する形で,村の1年間の運命を一身に担わせる方式を保持してきた村はほかにも多かったのである。…

【諸手船】より

…島根県八束郡美保関町美保神社の諸手船神事に用いられる刳(くり)舟。常時2艘を備えつけ,約40年ごとに造り替えるきまりで,現存のものは1980年に古形を踏襲して造ったもの。…

※「美保神社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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