美ヶ原
うつくしがはら
長野県松本市の東方、筑摩産地(ちくまさんち)にある高原台地。最高峰王ヶ頭(おうがとう)(2034メートル)を中心に、物見石山、武石峰(たけしみね)、王ヶ鼻、茶臼山(ちゃうすやま)などの山々に囲まれた平均高度2000メートル前後の波浪状高原台地で、信州の展望台といわれるほど360度方向の眺望がきく。従来、この高原は溶岩台地といわれたが、最近は、凹地(くぼち)に堆積(たいせき)した火山性の凝灰岩や礫岩(れきがん)が隆起し、その後侵食されてできたものとされている。高原の面積はおよそ5平方キロメートルで、一面の草原をなし樹木はない。これは、従来牧場(1899年開設)に利用していたためで、人工的に形成されたものである。美ヶ原は八ヶ岳(やつがたけ)中信高原国定公園の一つの中心をなし、年間延べ約100万人の観光客が訪れる信州の代表的高原観光地。高原には美しの塔、三城(さんじろ)牧場、美が原高原美術館などがあり、北アルプス連峰をはじめ、富士山、八ヶ岳、中央アルプスなど雄大な眺めを楽しむことができる。この観光地の特色は、第一に植物の種類が多いことで、低山帯と亜高山帯の植物が入り交じり、ハクサンフウロ、ウメバチソウ、マツムシソウ、ヤナギランなどの群落や、レンゲツツジ、スズラン、キスゲなどがある。またチョウの種類も多い。第二は四周の眺望が優れていることで、詩人尾崎喜八(きはち)は、「登りついて不意に開けた眼(め)の前の風景に、しばらくは世界の天井が抜けたかと思う……」と歌っている。松本市、茅野(ちの)市、小諸(こもろ)市などからいずれもバスで1時間内外で到達でき、ロッジやホテル、ハイキングコース、キャンプ場がある。なお1981年(昭和56)霧ヶ峰ビーナスラインが開通した。
[小林寛義]
『斎藤守著『美ヶ原高原』(1964・朋文堂)』
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デジタル大辞泉
「美ヶ原」の意味・読み・例文・類語
うつくし‐が‐はら【美ヶ原】
長野県松本市の東方にある溶岩台地の高原。標高約2000メートル。レンゲツツジをはじめ植物の種類に富む。四周の眺望にすぐれた観光地。
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うつくしがはら【美ヶ原】
長野県の中央部にある高原。第三紀末に噴出した溶岩が浸食されて平たんになったもので,王ヶ頭(2034m)を中心に,武石峰,王ヶ鼻,牛伏山,物見石山など,標高2000m内外の台地が連なっている。高原は国有地であるが,地元の牧野組合に貸与されて1900年ころ牧場となり,夏の間乳牛が放牧されている。30年ころから観光の対象となり,第2次大戦後本格的に観光地化した。牧場の中心に〈美しの塔〉があり,尾崎喜八の美ヶ原をうたった詩が刻まれている。
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美ヶ原
うつくしがはら
市の東方に三・四キロの幅をもち、南北四キロにわたる乾燥高原。平均標高一九〇〇メートル。山辺谷の峡谷を隔てて筑摩山脈の主峰鉢伏山と相対する。標高二〇三四メートルの王ヶ頭の高地を最高峰として、武石峰・焼山・牛伏山・鹿伏山・茶臼山・物見石山などが起伏して連なる中部山岳地帯の展望台である。第三紀末から第四紀にかかわる古い火山台地であり、浸食によって平坦な台地に変わり、更に隆起して高原状を呈したとみられる。東南には蓼科山(二五三〇メートル)・霧ヶ峰高原、八ヶ岳連峰(主峰の赤岳は二八九九メートル)、富士山の姿が望まれ、西には北アルプスの前山をはじめ槍ヶ岳(三一八〇メートル)、穂高岳(三一九〇メートル)、西南の乗鞍岳(三〇二六メートル)、また南方の御嶽山(三〇六三メートル)、仙丈ヶ岳(三〇三三メートル)と三千メートル級の高山が眺められる。
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世界大百科事典内の美ヶ原の言及
【筑摩山地】より
…長野県のほぼ中央に位置する標高1000~2000mの山地。南から北へ鉢伏山(1929m),美ヶ原(王ヶ頭(おうがとう),2034m),四阿屋(あずまや)山(1387m),聖(ひじり)山(1447m)など,おもに第三紀層からなる山々が並ぶ。中心の美ヶ原周辺にはなだらかな小起伏面が発達し,各種の高山植物,ツツジ,スズランなどが群生しており,冬はスキーの適地となる。…
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