羊肉(読み)ようにく

精選版 日本国語大辞典 「羊肉」の意味・読み・例文・類語

よう‐にく ヤウ‥【羊肉】

〘名〙 羊(ひつじ)の肉。
※両足院本山谷抄(1500頃)四「羊━は羊肉の心ぞ」
※尋常小学読本(1887)〈文部省〉六「やうやく一つの筏を作り、牛肉羊肉のくゎんづめ、〈略〉之をも共にのせて帰りたり」 〔荘子‐徐無鬼〕

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デジタル大辞泉 「羊肉」の意味・読み・例文・類語

よう‐にく〔ヤウ‐〕【羊肉】

羊の肉。マトン

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改訂新版 世界大百科事典 「羊肉」の意味・わかりやすい解説

羊肉 (ひつじにく)

食用にするヒツジの肉のうち,生後1年未満のヒツジからの肉をラムlamb,生後20ヵ月以上の成熟したヒツジからの肉をマトンmuttonという。日本での羊肉の生産量は208t(1995)で,ほとんど全部輸入に頼っている。マトンは肉色素の含量が約0.25%で牛肉の約半分,豚肉の約4倍である。したがって豚肉より色が濃く,牛肉よりは色が淡い。肉質も豚肉よりは硬く,牛肉よりは柔らかく,両者の中間的な位置にある。独特な臭気があるので,正肉用としてはあまり用いられないが,安価であるのでプレスハム,ソーセージなどの肉製品の製造原料として,またハンバーグなどの冷凍食品の材料としてよく用いられる。ラムはマトンに比べて色が淡く肉質も柔らかで羊肉特有の臭気も少ないので,羊肉の中では高価であり,ステーキ用やジンギスカン料理用として用いられる。

 ヒツジは旧大陸において最も早く家畜化されたものの一つであり,アジア,ヨーロッパの遊牧民にとって最もたいせつな食料である。また旧約聖書の中で,神より食べることを許された動物であり,過越(すぎこし)の祭というユダヤ教の聖日には犠牲として子ヒツジをほふって神に捧げる。中国では古代の殷時代にすでに食用にしており,豚肉と並んで重要な食用肉である。日本では平安時代の《延喜式》巻三十二,大膳式上の条に〈羊脯(ひつじのほじし)〉(脯は干した肉)の文字が見える。日本最初の殺生禁断の命令が出された675年(天武4)の詔勅には〈牛馬犬猿鶏の宍(しし)(肉のこと)を食うことなかれ〉とあり,この中にヒツジは入っていない。したがって日本には牛馬よりは比較的遅くに大陸から帰化人によってもたらされたものと考えられる。

 化学的組成はマトンのうち脂肪の多いものは水分39~43%,タンパク質14%,脂肪41~45%,灰分0.8~1.0%で,脂肪の少ないものは水分50~67%,タンパク質16~20%,脂肪12~16%,灰分0.7~1.1%であり,ラムについては水分53~64%,タンパク質18~19%,脂肪16~28%,灰分1.0~1.1%である。料理としては,ロースト,付け焼,煮込みなどにすることが多いが,中国料理の烤羊肉カオヤンロウ)や涮羊肉(シユワンヤンロウ)がよく知られている。前者は日本でジンギスカン料理と呼ばれるもの,後者はしゃぶしゃぶ風のなべ物である。
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食の医学館 「羊肉」の解説

ひつじにく【羊肉】

《栄養と働き&調理のポイント》


 フランス料理でおなじみのラムは、生後1年未満の子羊(こひつじ)の肉。1年以上の成羊の肉はマトンといいます。
〈豊富に含まれるカルニチンが中性脂肪・コレステロール値を下げる〉
○栄養成分としての働き
 ところで、羊肉に含まれる栄養素で注目したいのがカルニチン。カルニチンは脂肪の代謝(たいしゃ)に深くかかわる物質で、血中の中性脂肪や悪玉コレステロールの値を低下させたり、肝臓への脂肪蓄積を抑えるなどの働きがあります。
 カルニチンは、人体では筋肉などに分布していて、体内でも合成される成分です。
 また、羊肉の脂質は飽和脂肪酸のステアリン酸が多く、冷めるとかたまりやすく、やや消化されにくいのが特徴です。
 これらの点から、焼いて脂(あぶら)を落とし、熱いうちに食べるのが、おいしく食べるコツといえます。
 羊肉は独特のにおいを消すのが料理のポイントです。においは脂に多く含まれるので、脂身を取り除いてハーブやスパイスで香りをつけ、できるだけ熱いうちに食べましょう。
○注意すべきこと
 ただ、脂が消化不良を起こしやすいので、食べすぎには注意してください。

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百科事典マイペディア 「羊肉」の意味・わかりやすい解説

羊肉【ようにく】

1年以上の成羊の肉をマトン,1年以下の子羊の肉をラムと呼ぶ。日本では羊毛用の副産物程度で,ほとんどはオーストラリア,ニュージーランドなどから輸入される。マトンは濃い紅色で成分および味は牛肉に似るが,特有のにおいをもつ。特に脂肪は冷えると固まりやすく風味が落ちる。タマネギ,ショウガ,ニンニクなどの香味を添えて調理し,ジンギスカン料理シャシリク,ステーキなど焼肉に適し,煮込みではアイリッシュシチューが知られる。ラムは淡紅色で柔らかく脂肪も少なく,におい・味ともマトンにまさり,ロースト,カツレツなどにも適する。
→関連項目ヒツジ(羊)ラム

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世界大百科事典(旧版)内の羊肉の言及

【ヒツジ(羊)】より

…脂肪尾羊系種の粗い毛は下級羊毛としてじゅうたんの原料毛に利用される。羊肉は繊維が細くて柔らかく消化しやすいが,特有の臭気があるので日本での評価は低い。また脂肪の融解点が高く,硬いので冷食には向いていない。…

※「羊肉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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