精選版 日本国語大辞典 「罷出」の意味・読み・例文・類語
まか・ず まかづ【罷出】
(ロ) (貴人に仕えていた者が)奉公をやめて出る。お暇をいただいて退下する。
※蜻蛉(974頃)中「まうでがたくのみおもひてはべるたよりになん。まかでんことは、いつとも思う給へわかれねば、きこえさせんかたなく」
[2] 〘他ダ下二〙 物などを、貴所から下げる。
※源氏(1001‐14頃)葵「つとめて、この箱をまかてさせ給へるにぞ、親しき限りの人々、思ひ合はする事どもありける」
まかり‐・でる【罷出】
〘自ダ下一〙 まかり・づ 〘自ダ下二〙 (「まかりいず(罷出)」の変化したもの)
① =まかりいず(罷出)①
※万葉(8C後)一一・二五六八「おほろかに我し思はばかくばかり難き御門を退出(まかりで)めやも」
② =まかりいず(罷出)②
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「ソノ ユエヲ ウケタマワラウ タメニ カタタノ アタリエ macari(マカリ) deta(デタ)〔伊吹の舞〕」
③ =まかりいず(罷出)③
※酒中日記(1902)〈国木田独歩〉五月六日「母から手紙が来て、明二十五日の午後まかり出るから金五円至急に調達せよと申込んで来た時」
まかり‐い・ず ‥いづ【罷出】
〘自ダ下二〙
① (上位者の命によって、あるいは、許しを得て、貴所・貴人のそばから出る意のもの) 貴所や貴人のもとから出るの意の謙譲語で、その「出る」動作の出発点やそこにいる人を敬う。退出する。退下する。退去する。まかりでる。まかず。
※伊勢物語(10C前)一二一「をとこ、梅壺より雨にぬれて、人のまかりいづるを見て」
② (「まかり」が自己側の動作をへりくだる意のもの) かしこまった気持での対話や消息(勅撰集などの詞書を含む)に用い、自己側の者の「出る」動作を、聞き手に対しへりくだる気持をこめて丁重にいう。出てまいります。(御免をこうむって)出ます。まかりでる。まかず。
※後撰(951‐953頃)春上・一五・詞書「女の、宮づかへにまかりいでて侍りけるに」
③ (②から転じて) 「出る」を改まった表現にしたもの。地の文にも用いる。かしこまって出る。出頭する。また、単に「出る」を堅苦しく表わすのにも用いる。まかりでる。
※浮世草子・好色一代男(1682)六「丹波口の初朝、小六が罷出て、御慶と申納」
[語誌]謙譲語「まかる」の連用形に「いづ(出)」が接続したもの。この「まかりいづ」が変化したのが「まかづ」で、「まかづ」が衰退した後も「まかりいづ」は使用された。
まかん‐・ず ‥づ【罷出】
〘自ダ下二〙 ⇒「まかず(罷出)」の語誌(2)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報