(読み)ひわる

精選版 日本国語大辞典 「罅」の意味・読み・例文・類語

ひわ・る ひはる【罅】

〘自ラ下二〙 ひび割れ目がはいる。割れる。
新撰字鏡(898‐901頃)「比波留」
源氏(1001‐14頃)真木柱「柱のひはれたるはざまに」
※法華経音訓(1386)「(ヒワル)
[補注](1)後世、「干割る」と混同された面があるが、「新撰字鏡」の表記などから判断して、本来は「ひはる」であり、その語源は定かでないが、あるいは「ひ」は「ひび」「ひま」などの「ひ」と同じで割れ目の意、「はる」は田畠を切り開く「はる(墾)」に対する自動詞で切り裂けるの意であったかとも思われる。
(2)「観智院本名義抄」に「 ヒバル」、「色葉字類抄」に「拆 ヒバル」という濁音表記も見られるところから、本来「ひばる」であったものが、清濁の表示不十分であったため「ひはる→ひわる」とよまれ、意味の近似も手伝って、しだいに「干割る」のように意識されていったとも考えられる。

ひび【罅】

〘名〙 (「ひび(皹)」を転用してできた語)
陶器、ガラス器などの表面にできる細かい割れ目。また、日照り続きなどのため、大地の表面にできる割れ目。ひびわれ。ひびき。ひびり。ひびれ。
邪宗門(1909)〈北原白秋〉古酒・灰色の壁「縦横にかず知れず走る罅(ヒビ) 青やかに火光(あかり)吸ひ」
心身が病み傷つくこと。また、罪を犯すこと。
※兄の立場(1926)〈川崎長太郎〉三「気紛(きまぐ)れな焦燥はただ自分の気持のひびを深めた丈けで」
③ 対人関係に生じたさしさわり、不和。
※故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉八「悪だくみで彼女と篠原との罅にA自分に有利な様、わざと手を入れる」

ひびら・く【罅】

〘自カ四〙 (「ひびらぐ」とも)
土器などが音を立てて割れる。〔観智院本名義抄(1241)〕
裂け目ができる。ひびく。
凍港(1932)〈山口誓子〉「くらがりや寒の障子のひびらげる」

ひびき【罅】

〘名〙 (動詞「ひびく(罅)」の連用形の名詞化) =ひび(罅)①〔日葡辞書(1603‐04)〕
※浮世草子・西鶴織留(1694)五「出尻あらしたる跡にて見れば大鍋にひびきを入」

ひびれ【罅】

〘名〙 (動詞「ひびれる(罅)」の連用形の名詞化) 割れ目。裂け目。きず。ひびり。ひび。転じて、欠けて不足すること。〔名語記(1275)〕
※浮世草子・庭訓染匂車(1716)三「千貫目にはひびれもなき玉屋と」

ひわれ ひはれ【罅】

〘名〙 (動詞「ひわる(罅)」の連用形の名詞化) ひびや割れ目のはいること。
※夫木(1310頃)一七「みなと出づるかこのとも舟ゆすれどもひわれもやらぬあさ氷かな〈源仲正〉」

ひび・れる【罅】

〘自ラ下一〙 ひび・る 〘自ラ下二〙 ひびがはいる。割れ目ができたり、きずがついたりする。
※授業編(1783)二「其の舌縦横にひびれたる筋あり」

ひは・る【罅】

〘自ラ下二〙 ⇒ひわる(罅)

ひびり【罅】

〘名〙 =ひび(罅)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「罅」の意味・読み・例文・類語

ひび【×罅】

《「ひび」と同語源》
陶器・ガラス・骨などにできる、細かい割れ目。
心身・人間関係などに生じた故障・不和などをたとえていう語。「友情に―が入る」
[類語]ひび割れ割れ目亀裂切れ目分け目裂け目小口切れ口継ぎ目節目ミシン目

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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