練習曲(読み)れんしゅうきょく(英語表記)study

翻訳|study

精選版 日本国語大辞典 「練習曲」の意味・読み・例文・類語

れんしゅう‐きょく レンシフ‥【練習曲】

〘名〙 主として器楽などの練習用に作られた楽曲。演奏技法などの習得をめざして作曲された楽曲。エチュード
家族会議(1935)〈横光利一〉「ピアノの練習曲の響いて来る中を」

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デジタル大辞泉 「練習曲」の意味・読み・例文・類語

れんしゅう‐きょく〔レンシフ‐〕【練習曲】

エチュード

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改訂新版 世界大百科事典 「練習曲」の意味・わかりやすい解説

練習曲 (れんしゅうきょく)
study

演奏技術の向上を目的とした楽曲,あるいは特殊な高度の技術を表現手法とした作品。エチュードétudeともいう。とくに16,17世紀に器楽曲が隆盛になるにつれて,作曲されるようになり,J.ダウランドの息子ロバートRobert Dowland(1591ころ-1641)のリュート教則本《リュート・レッスンのさまざま》(1610)や,J.プレーフォードの出版したビオル教則本は初期の最も重要な練習曲に数えられる。18世紀に入るととくに鍵盤楽器を中心に多くの練習曲および教則本がつくられるが,なかでもF.クープランの《クラブサン奏法》(1716),エマヌエルバッハの《正しいクラビーア奏法の試論》2部(1753,62)は,運指法や装飾法の手引きとしてだけではなく,作曲家の個人様式や特定の時代様式に即した練習の手引きとしても意味をもつ。また,J.S.バッハの《インベンション》は息子や弟子の教育目的に作曲された練習曲であり,彼の《イタリア協奏曲》や《ゴルトベルク変奏曲》などは《クラビーア練習曲集》として出版された。

 18世紀の末になり,音楽愛好家が増大し,ピアノなどの楽器が量産され,音楽出版活動が盛んになると,練習曲のもつ意味も変化してくる。C.チェルニーは初歩から上級までの段階的なピアノの練習曲を作り,さらにM.クレメンティは《グラドゥス・アド・パルナッスム》を作曲したが,これらは今日でも重要な練習曲の一つである。自ら演奏する音楽愛好家の増大に伴い,より高度の演奏技巧の表現が求められるようになり,演奏会目的の練習曲が作曲されるようになる。とくに,ショパンの作品10,作品25の《12の練習曲》(1832,36),リストの《超絶技巧練習曲》(1841)はその代表的なものであり,ドビュッシーも手がけている。これらは特定の技巧による表現を究極まで推し進めたもので,芸術性の高い一種のキャラクター・ピースである。また,シューマンは《交響的練習曲》(1837)を作曲しているが,これは高度な技術を駆使した変奏曲であり,いわゆる教則本ではない。

 20世紀に入ると,一方では音楽の初等教育を重視する立場から,各楽器の特性に即したさまざまな練習曲が作られたが,そのなかでも特筆に値するのが,バルトークの作曲したピアノのための6集の《ミクロコスモス》である。ここにおいては単に指の練習のみならず,民族的な語法を駆使した新しい表現が求められている。練習曲の表題をもつ作品としてはほかに,ストラビンスキーオーケストラのための《四つの練習曲》(1928)などの作品もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「練習曲」の意味・わかりやすい解説

練習曲
れんしゅうきょく

音楽用語。フランス語のエチュードétudeの訳語。文字どおりには、器楽または声楽の演奏技術向上のためにつくられた楽曲のことをさすが、この意味では教則本など楽器や声の訓練のために書かれたあらゆるものが含まれる。しかしなかには、単に技術の習得だけを目ざすことを超え、音楽作品として充実した内容をもつものもある。こういった楽曲はどんな楽器を対象としてもありうるが、近代に入って楽器のより高度な演奏技術が要求されるようになったり、新しい楽器が出現することによって、練習曲はことさら重要な意味をもつことがあった。19世紀に入って書かれたピアノのためのそれは、まさにそうした代表的な例である。18世紀後半に普及が浸透していった新種の楽器ピアノは、初めのうちは旧来の鍵盤楽器との奏法上の違いがそれほど意識されなかったが、楽器自体の変革とともに、奏法が容易には習得しがたいものとなって、おびただしい練習曲が書かれるようになる。こうして生まれたのが、クレメンティ、ヨハン・B・クラーマー、チェルニー、モシェレスらのピアノ練習曲で、これらは今日なお、ピアノ学習者にとって最高の演奏技術を獲得するための習練の一つに数え上げられている。こうした過程を経て、ショパンの27曲の練習曲、リストの『超絶技巧練習曲』や『パガニーニによる超絶技巧練習曲』、さらにスクリャービンやドビュッシーの練習曲など、演奏会で取り上げられる作品も生まれるに至り、練習曲はピアノ音楽の一つのジャンルともなった。

[大崎滋生]

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百科事典マイペディア 「練習曲」の意味・わかりやすい解説

練習曲【れんしゅうきょく】

演奏技術や表現力の向上を目的とした楽曲,または難度の高い特殊な技術を表現手法とした楽曲。フランス語でエチュードともいう。普通は1曲1曲が,音階やアルペッジョなどの特定の訓練に向けられる。18世紀以降のヨーロッパでは主に鍵盤(けんばん)楽器用のものが数多く誕生し,のちのショパンはこれに演奏会にもふさわしい形態を与え,リストも《超絶技巧練習曲》などを作曲。その後の作品としてはスクリャービンドビュッシーなどのものが広く知られる。→リチェルカーレ
→関連項目スカルラッティ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「練習曲」の意味・わかりやすい解説

練習曲
れんしゅうきょく

エチュード」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の練習曲の言及

【素描】より

…即興性と速写生を特質とする,簡単な素材による素描の総称であり,ルネサンス(16世紀)においては芸術的発想の第一段階としてもっとも重要視された。(2)習作study フランス語でエチュードétudeまたはエスキスesquisseという。スケッチと対照的に,ある対象を入念に観察し,研究するための素描をさす。…

※「練習曲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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