デジタル大辞泉
「緩」の意味・読み・例文・類語
ゆる【緩】
[形動ナリ]
1 締め方がきつくないさま。ゆるいさま。
「(髪ヲ)いと―にひき結はせ給ひて」〈栄花・楚王の夢〉
2 ゆっくりとしたさま。
「花誘ふ風―に吹きける夕暮れに」〈宇津保・国譲下〉
3 寛大なさま。おうよう。
「我をば人はいかがいふなど人に問はせ給ひけるに、―になむおはしますと」〈大鏡・道長下〉
4 ゆるがせにするさま。いいかげんなさま。
「しかれば公私につきて、露ばかりも―なること無かりけり」〈今昔・二九・三〇〉
かん〔クワン〕【緩】
[形動][文][ナリ]物事の進行がゆったりしているさま。
「或いは急に、或いは―に遠慮なく駆け廻る」〈緑雨・油地獄〉
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ゆる・い【緩】
〘形口〙 ゆる・し 〘形ク〙 (「ゆる(緩)」「ゆるす(許)」と同語源)
① 糸や紐などを張ったり結わえたりした時に、たるみやすきまがあってきっちりしていない。また、まわりからしめつけたときの度合が弱い。たるんでいる。⇔
きつい。
※殿暦‐長治二年(1105)正月二六日「今夜の結緒をゆるくむすびて、昨日成文をそれにさしはさみて」
※和英語林集成(
初版)(1867)「クツガ yurui
(ユルイ)」
※
断橋(1911)〈
岩野泡鳴〉九「大抵は義雄のからだに相応してゐるが胴のところが少しゆるいので、
チョッキの下に、勇の厚い綿入れ胴衣をつけた」
③ 水分が
多くて、十分に固まってない。ねばりけがない。「糊をゆるくのばす」「ゆるいかゆ」「便がゆるい」 〔
日葡辞書(1603‐04)〕
※枕(10C終)一九七「風は嵐。三月ばかりの
夕暮にゆるく吹きたる雨風」
⑤ 動きが緩慢である。ゆっくりしている。のろい。
※白氏文集天永四年点(1113)三「奔車輪緩(ユルウ)して旋風遅し」
※
徒然草(1331頃)四九「速にすべき事をゆるくし、ゆるくすべきことを急ぎて」
⑥ 厳しさがない。いいかげんである。たるんでいる。てぬるい。油断している。〔書陵部本名義抄(1081頃)〕
※
太平記(14C後)一七「菊池肥後守は、
警固の宥
(ユル)くありける隙を得て
本国へ逃下りぬ」
⑦ 寛大である。おっとりとしている。おうようである。おおらかである。
※
書紀(720)皇極四年六月(岩崎本訓)「上つ宮の王
(みこ)等、性
(ひととなり)順
(ユルクシ)て都て罪有ること無し」
※徒然草(1331頃)二
一一「心を用ゐる事少しきにしてきびしき時は、物にさかひあらそひて破る。ゆるくしてやはらかなる時は、一毛も損せず」
⑧ 変化する度合が急激でない。
傾斜の角度、
曲線の
円弧などがなだらかである。
※断橋(1911)〈岩野泡鳴〉一一「それから
勾配のゆるい下り坂になったが」
ゆる‐げ
〘形動〙
ゆる‐さ
〘名〙
ゆる【緩】
〘形動〙
① ぴんと張りつめていないさま。しめつけ方がきつくないさま。ゆるいさま。
※
源氏(1001‐14頃)若菜上「父おとどは、琴の緒もいとゆるに張りて、いたうくだして
調べ」
② 速くないさま。ゆっくりしているさま。また、勢いの弱いさま。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「花さそふ風ゆるに吹ける夕暮に、花雪のごとく降れるに」
③ 厳格でないさま。寛大なさま。おおらか。
※大鏡(12C前)六「われをば人はいかがいふ、など人に問はせ給ひけるに、ゆるになむおはしますと世には申す、と奏しければ」
④ ゆるがせにするさま。手を抜くさま。おこたるさま。怠慢。おろそか。
※今昔(1120頃か)一七「法を説て人を教化すと云へども自(みづから)の勤(つとめ)は緩(ゆる)也けり」
ゆるり【緩】
〘副〙 (多く「と」を伴って用いる)
① 心おきなく、くつろいでいるさま、心にゆとりがあって、のんびりとしたさまを表わす語。ゆっくり。ゆるゆる。〔名語記(1275)〕
※虎明本狂言・水掛聟(室町末‐近世初)「上頭へ御年貢をあげ、われらもゆるりといたそう」
② 余裕が十分にあるさま、ゆったりとしたさまを表わす語。不足なく、らくらくと。
※中華若木詩抄(1520頃)上「字対を結構にすれば、わざとめいて、ゆるりとない也」
※仮名草子・東海道名所記(1659‐61頃)三「早くのり給へとて、男と共に急ぎ舟にとびのる、艫(とも)のかた広くて、ゆるりとのりけり」
③ 動作が遅いさまを表わす語。ゆっくり。ゆるゆる。
※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉九「後(あと)の馬車はまだ来ねへか、でへぶゆるりしてゐるの」
ゆら・う ゆらふ【緩】
(「ゆる(緩)」と同語源)
[1] 〘自ハ下二〙 緊張を解いて、とどまって休む。また、進むことができずにいる。ゆらゆ。
※平家(13C前)一「けふは日暮ぬ、あすのいくさとさだめて、其日はよせでゆらへたり」
[2] 〘他ハ下二〙 緊張を解いた状態にする。ゆるくする。休める。また、ひかえとどめる。
※今昔(1120頃か)二五「守、兵等を汰(ゆら)へむが為不責討」
ゆるかし・い【緩】
〘形口〙 ゆるか
し 〘形シク〙 (「ゆるがしい」とも) ゆったりとしている。ゆとりがある。寛大である。〔日本一鑑窮河話海(1565‐66頃)〕
※雑俳・柳多留‐初(1765)「さいそくも質屋のするはゆるかしい」
ゆら・ゆ【緩】
〘自ヤ下二〙 (ハ行下二段活用の「ゆらふ」から転じて、室町時代ごろから用いられた語。多くの場合、終止形は「ゆらゆる」の形をとる) =
ゆらう(緩)(一)
※平治(1220頃か)中「弓のはずにて鎌田が甲の鉢をちゃうどつく、つかれてゆらゆる間に、冑をとてうちきつつ」
ゆる・く【緩】
〘自カ下二〙 ゆるくなる。ゆるむ。〔書陵部本名義抄(1081頃)〕
※古文真宝笑雲抄(1525)五「日弛〈略〉初のつつしむ心そろそろゆるけてをごりの心がつくぞ」
かん クヮン【緩】
〘形動〙 物事の進み具合がゆるやかなさま。ゆっくりなさま。
※史記抄(1477)一四「五臓本脉は、肝は弦也。心は洪也。脾は緩也。肺は毛也。腎は石也」
ゆるかし【緩】
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報