編年体(読み)へんねんたい(英語表記)biān nián tǐ

精選版 日本国語大辞典 「編年体」の意味・読み・例文・類語

へんねん‐たい【編年体】

〘名〙 歴史書記述の一体裁。年月の順を追って、記述する方法。→紀事本末体紀伝体
学生教養(1936)〈鈴木利貞編〉教養としての哲学桑木厳翼〉四「然し又哲学史を概観する場合に、〈略〉従来のを凡て列伝体、編年体として非難し去らうとする傾きがある」 〔北史王劭

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デジタル大辞泉 「編年体」の意味・読み・例文・類語

へんねん‐たい【編年体】

史記述の形式の一。年月の順を追って事実の発生・発展を記述するもの。中国の「春秋」に始まる。→紀伝体きでんたい

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改訂新版 世界大百科事典 「編年体」の意味・わかりやすい解説

編年体 (へんねんたい)
biān nián tǐ

中国における歴史叙述の形式の一つで,紀伝体,紀事本末体と併せて史の三体という。司馬遷が紀伝体を創出する以前の史書に用いられた,年を追って事件を記すいわゆる年代記の形式である。そのため《隋書》経籍志では編年体の史書を史部古史類に分類するのであって,古史の体ともいう。編年体の書は《春秋》《資治通鑑(しじつがん)》に代表される。中国には,西暦やイスラム暦のような統一的な年代表記法がないため,2朝以上が併存する時代を記録するにはいずれかの王朝を正統と認めねばならず,編年体の史書に示される正統論は,日本でも水戸藩の《大日本史》などに大きな影響を与えた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「編年体」の意味・わかりやすい解説

編年体
へんねんたい

史実の展開や人物の事績を時を追って記す年代記であり、歴史叙述の形式としてはもっとも伝統的、かつ普遍的なもの。中国でも起源が古く、孔子(こうし)の著作といわれる『春秋(しゅんじゅう)』、その注釈書の一つ『春秋左氏伝(さしでん)』、また『前漢紀(ぜんかんき)』『後漢紀(ごかんき)』などがある。『史記(しき)』以後、正史は紀伝体(きでんたい)で記されることになったが、紀(本紀(ほんぎ)、帝紀(ていき))もまた編年体である。北宋(ほくそう)の司馬光撰(しばこうせん)『資治通鑑(しじつがん)』(294巻)はもっとも優れた編年史であり、周代から五代(ごだい)末までのことを記す。このあとを続けた編年史としては、南宋の李燾(りとう)撰『続(ぞく)資治通鑑長編(ちょうへん)』(60巻)、清(しん)の徐乾学(じょけんがく)ら撰『資治通鑑後編』(184巻)などがある。

[尾形 勇]

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百科事典マイペディア 「編年体」の意味・わかりやすい解説

編年体【へんねんたい】

歴史の編集方法の一つで,年代の順序を追って叙述するもの。紀伝体の対。→年代記
→関連項目紀事本末体資治通鑑百練抄(百錬抄)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「編年体」の解説

編年体
へんねんたい

中国の歴史書の叙述形式の一つで,年月を追って記事を配列する。紀伝体・紀事本末体とあわせて史の三体といい,「春秋左氏伝」など古い時代の史書はこの形式。歴史の共時的な動きを追うには便利だが,大局的な把握は紀伝体に及ばず,紀伝体が現れるとあまり採用されなくなった。しかし宋代の「資治通鑑(しじつがん)」は編年体の代表的な史書であり,日本の六国史(りっこくし)もこれによっている。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「編年体」の解説

編年体(へんねんたい)

年月を追って史実を記述する史書叙述形式。紀伝体(きでんたい),紀事本末体(きじほんまつたい)とともに三体という。『春秋』『漢紀』『後漢紀』『資治通鑑』(しじつがん)などがその例。

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旺文社日本史事典 三訂版 「編年体」の解説

編年体
へんねんたい

歴史上の事件を,すべて年月にかけて記していく歴史叙述の方法
紀伝体に比べて,総体的な流れはわかりやすいが,個々の事象について関連してとらえにくい。六国史の後半が,年表か日誌のようになっているのは,編年体の悪い例。

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旺文社世界史事典 三訂版 「編年体」の解説

編年体
へんねんたい

年月を追って事実を記述する,中国の歴史記述の一形式
これに対し,『史記』『漢書』以後の正史は紀伝体をとる。『春秋』や宋の司馬光の『資治通鑑 (しじつがん) 』が代表的。

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世界大百科事典(旧版)内の編年体の言及

【通鑑紀事本末】より

…司馬光の《資治通鑑(しじつがん)》をいったん解体し,戦国時代から五代に至る1362年間の歴史を239篇の〈事〉(歴史事象,できごと)に再編成し,それぞれの本末(てんまつ)を記したもの。もともと中国の歴史記述の様式には紀伝体と編年体があるが,前者は各パートが独立しているため,同一の〈事〉が重複して現れることがあるし,後者は時間が主で〈事〉が従であるため,複数の〈事〉が並行して記述されたり,ひとつの〈事〉がしばしば寸断される結果,〈事〉をひとまとまりとしてとらえがたいという欠点がある。袁枢はここに第三のスタイルとして紀事本末体を創案し,その克服を図ったのである。…

※「編年体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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