緊張型頭痛(読み)キンチョウガタズツウ

デジタル大辞泉 「緊張型頭痛」の意味・読み・例文・類語

きんちょうがた‐ずつう〔キンチヤウがたヅツウ〕【緊張型頭痛】

精神的・身体的なストレスから頭部の筋肉が持続的に収縮するために起こる頭痛。頭全体が締めつけられるような鈍い痛みが続き、頭が重く感じられる。肩や首筋のこり、目の疲れ、体のだるさを伴うことが多い。筋緊張性頭痛

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EBM 正しい治療がわかる本 「緊張型頭痛」の解説

緊張型頭痛

どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 頭痛は大きく分けると、脳腫瘍(のうしゅよう)、脳出血、くも膜下出血(まくかしゅっけつ)髄膜炎(ずいまくえん)などといった頭蓋(とうがい)内外に器質性の病気や外傷があるためにおこる症候性頭痛(しょうこうせいずつう)と、そうした病気がなく慢性的におこる機能性頭痛(きのうせいずつう)の二つがあります。症候性であるか機能性であるかによって、治療やその後の経過が大きく変わってきますので、これらをしっかり判別することが重要です。
 経験したことのないような激しい頭痛、急性におこった頭痛、発熱、吐き気、嘔吐(おうと)を伴う頭痛などではくわしい検査が必要となります。
 緊張型頭痛(きんちょうがたずつう)は機能性頭痛の代表的なもので、慢性的におこる頭痛のなかではもっとも頻度(ひんど)の高いものです。前兆となるような症状はなく、両側におこります。痛みは徐々に増し、「頭が締めつけられるような」、「きついヘルメットで圧迫されているような」痛みが、おもに後頭部(こうとうぶ)から頸部(けいぶ)(首)にかけて持続します。
 肩こりなど頸部の筋肉の過度の緊張を伴う場合が多く、また、疲労や精神的ストレス、悪い姿勢、睡眠不足などが引きがねになる場合もあります。
 緊張型頭痛自体は深刻な状態を招くものではなく、寝込んだりする必要もありません。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 緊張型頭痛という名前が付いているのは、かつて頭頸部の筋肉の過度の収縮によって痛みがおこると考えられていたからです。しかし、筋収縮と頭痛の因果関係は見いだされないことが近年の研究によってわかってきました。
 現在、要因として考えられているのはストレスなど心理的な問題です。頭痛を悪化させる要因としては、眼精疲労、いすや机の高さと関係した無理な姿勢、頸椎(けいつい)の変形、歯の食いしばり癖などがあげられます。

●病気の特徴
 緊張型頭痛は、10歳代からお年寄りまで幅広い年齢層でみられます。そのなかでも、とくに多いのが中高年の女性です。


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

[治療とケア]症候性との鑑別のためにCT検査を行う
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 症候性頭痛に特徴的な症状を認める場合には、頭部CTによる検査が必要です。アメリカで作成された診療ガイドラインによると、①神経学的異常を認める場合、②神経学的異常がはっきりしない場合(頭痛で目が覚める、高齢者の頭痛、進行性頭痛など)、③機能性頭痛の症状が非典型的な場合、頭部CTなどの画像検査を行うとされています。(1)

[治療とケア]過労やストレスの多くなる要素がないか、仕事や生活を見直す
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 信頼性の高い臨床研究によると、ストレスマネージメントによって頭痛の症状が軽快し、抗うつ薬と同等の効果が認められています。(2)

[治療とケア]高い枕、悪い姿勢など頸部の筋肉に過度の緊張をもたらす習慣がないか見直す
[評価]☆☆
[評価のポイント] 生活習慣の見直しが効果的であることについては、専門家の意見や経験から支持されています。

[治療とケア]頸部の筋肉の緊張をほぐすマッサージを行う
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] マッサージなどの理学療法によって、頭痛の症状が軽快したとする信頼性の高い臨床研究があります。(3)

[治療とケア]適度な運動を行う
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 等張性運動を含む理学療法が、緊張型頭痛の頻度や強さを軽減したとの結果を示した信頼性の高い臨床研究があります。(2)

[治療とケア]適度な睡眠をとる
[評価]☆☆
[評価のポイント] 睡眠をとることは、専門家の意見や経験から支持されています。

[治療とケア]不安を取り除くために抗不安薬を用いる
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 臨床研究によって効果が確かめられています。不安の症状が強い場合は有効かもしれません。(4)

[治療とケア]筋肉の緊張をやわらげるために筋弛緩薬を用いる
[評価]☆☆
[評価のポイント] 臨床研究によって効果が確認されています。しかし、一つの研究ではプラセボ(偽薬)と変わりないという報告があります。したがって第二選択薬となると思われます。(5)(6)

[治療とケア]うつ状態が激しいときは抗うつ薬を用いる
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 抗うつ薬は非常に信頼性の高い臨床研究によって、プラセボと比べ頭痛症状、鎮痛薬の減量、頭痛に関連した身体症状を減少させる効果があることが示されています。うつ状態に対してだけではなく、頭痛の症状に対しても用いるべきでしょう。(2)(7)


よく使われている薬をEBMでチェック

不安が強い場合
[薬名]デパス(エチゾラム
[評価]☆☆
[薬名]セレナール(オキサゾラム
[評価]☆☆
[薬名]コンスタン/ソラナックス(アルプラゾラム)(4)
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] エチゾラム、オキサゾラムともに専門家の意見や経験から支持されているものです。アルプラゾラムは、効果を認めたとの臨床研究があります。

筋緊張が強い場合
[薬名]テルネリン(チザニジン塩酸塩)(5)(6)
[評価]☆☆
[薬名]ミオナール(エペリゾン塩酸塩
[評価]☆☆
[評価のポイント] チザニジン塩酸塩はいくつかの臨床研究で効果が報告されています。しかし、一つの報告ではプラセボと変わりないという報告があるので、第二選択薬になると思われます。エペリゾン塩酸塩に関しては、専門家の意見や経験から支持されています。

うつ状態が強い場合
[薬名]トリプタノール(アミトリプチリン塩酸塩)(2)(7)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 予防薬として有効です。非常に信頼性の高い臨床研究によって効果が確認されています。

痛みが強い場合短期間に用いる
[薬用途]非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs
[薬名]ブルフェン(イブプロフェン)(2)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)(2)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬名]バファリンアスピリン・ダイアルミネート配合剤)(2)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 信頼性の高い臨床研究によって、疼痛(とうつう)抑制効果が確認されています。

[薬名]アセトアミノフェン(アセトアミノフェン)(8)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 信頼性の高い臨床研究によって、疼痛抑制効果が確認されています。

[薬名]ポンタール(メフェナム酸
[評価]☆☆
[評価のポイント] メフェナム酸は、専門家の意見や経験から支持されています。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
原因となる深刻な疾患がないかどうかを見極める
 頭痛での最大の心配は、生命にかかわる病気がないかどうかです。
 脳腫瘍、脳出血、くも膜下出血、髄膜炎などといった深刻な病気や外傷があるために頭痛がおこっている場合もあります。したがって、一度は、くわしい症状と診察結果に基づいて、必要ならばCT検査で頭蓋内の異常がないことを確かめる必要があります。
 これまで経験したことのないような激しい頭痛であるとか、急性におこった頭痛であるとか、発熱、吐き気、嘔吐を伴う頭痛などでは、とくに注意が必要となるでしょう。

ストレスマネージメントのノウハウを学ぶ
 頭蓋内に異常がないことが確かめられたうえで、頭痛の誘因となる因子を見つけ出し、可能ならばその因子を取り除きます。
 過労やストレス、とくに仕事上のストレス、睡眠不足などがしばしば緊張型頭痛の要因となっています。医師やカウンセラーなどから、ストレスマネージメントのノウハウを学ぶのも一つの方法でしょう。
 必ずしも質の高い根拠はなくても、人によっては運動(速足歩行、ジョギング、水泳、自転車など)や、仕事のスケジュール調整が緊張型頭痛の軽減に役立つことも少なくありません。
 このような方法は、副作用もなく自分でできるものです。体に無理のない方法で試してみる価値は十分あると思われます。

非ステロイド抗炎症薬は最小限にし、マッサージや抗うつ薬も検討
 いったんおこった頭痛については、第一選択として非ステロイド抗炎症薬が用いられます。また、頸部の筋肉のマッサージ、抗不安薬の服用、場合によれば抗うつ薬の服用が有効なこともあります。頻繁な利用による薬物乱用頭痛をひきおこすことがあるため、鎮痛薬の利用頻度はなるべく最小限にすることが大切です。
 抗うつ薬については、頭痛症状の予防効果だけでなく、鎮痛薬の減量、頭痛に関連した身体症状を軽減する効果が、非常に信頼性の高い研究によって認められています。

(1)Silberstein SD, Rosenberg J. Multispecialty consensus on diagnosis and treatment of headache. Neurology. 2000;54:1553.
(2)Bendtsen L, Evers S, Linde M, Mitsikostas DD, Sandrini G, Schoenen J; EFNS.EFNS guideline on the treatment of tension-type headache - report of an EFNS task force. Eur J Neurol. 2010 Nov;17(11):1318-25.
(3)Lenssinck ML, Damen L, Verhagen AP, Berger MY, Passchier J, Koes BW. The effectiveness of physiotherapy and manipulation in patients with tension-type headache: a systematic review. Pain. 2004 Dec;112(3):381-8.
(4)Shukla R, Nag D, Ahuja RC. Alprazolam in chronic tension type headache. J Assoc Physicians India. 1996;44:641-644.
(5)Fogelholm R, Murros K. Tizanidine in chronic tension-type headache: a placebo controlled double-blind cross-over study. Headache. 1992;32:509-513.
(6)Murros K, Kataja M, Hedman C, et al. Modified-release formulation of tizanidine in chronic tension-type headache. Headache. 2000;40:633-637.
(7)Jackson JL, Shimeall W, Sessums L, Dezee KJ, Becher D, Diemer M, Berbano E.O'Malley PG. Tricyclic antidepressants and headaches: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2010 Oct 20;341.
(8)Prior MJ, Cooper KM, May LG, Bowen DL. Efficacy and safety of acetaminophen and naproxen in the treatment of tension-type headache. A randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Cephalalgia. 2002 Nov;22(9):740-8.

出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報

六訂版 家庭医学大全科 「緊張型頭痛」の解説

緊張型頭痛
きんちょうがたずつう
Tension-type headache
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 機能性頭痛のひとつで、日本でも約20~30%の有病率といわれ、最も多く認められる頭痛です。以前は筋収縮性頭痛(きんしゅうしゅくせいずつう)といわれていましたが、筋肉の収縮を伴うタイプと伴わないタイプがあり、緊張型頭痛といわれるようになりました。

 首筋が張る、肩がこるなどの訴えとともに、頭痛は徐々に始まり、後頭部の鈍痛が多くみられます。患者さんによっては、痛みというよりも重い感じ、何かをかぶった感じと訴えることもあります。症状は片頭痛に比べて、長く続くのが特徴です。

原因は何か

 頭痛の誘因としては、国際頭痛学会の緊張型頭痛を引き起こす因子の表(表5)に示したように、ストレスや不安、うつなどさまざまな因子が関係します。多くの場合は睡眠不足が続いたり、あるいは心配事が頭から離れなかったりするとひどくなります。また、結婚、就職、転職など、生活環境の変化に伴って増悪することが多くみられます。

症状の現れ方

 緊張型頭痛は徐々に始まり、首筋が張る、肩がこるなどの訴えとともに、後頭部の鈍痛として認められることが多くみられます。痛みというよりも重い感じ、圧迫される感じ、締めつけられる感じ、また、何かをかぶった感じ(被帽感)と訴えることもあります。頭痛は1週間~10日ほど続くことが多いのですが、時には1カ月のうち15日以上、ほとんど毎日頭痛が続くこともあります。

検査と診断

 片頭痛と同様に、機能性の頭痛ですので、器質的疾患を除外することが重要であり、必要に応じて脳の画像診断を行います。

 一般に、内科的・神経学的診察ではとくに異常を認めませんが、肩・項筋(こうきん)・後頭筋・側頭筋の硬結(しこり)、圧痛を確認することが診断の根拠になります。硬結と圧痛の間には一般に相関関係がありますが、時に硬いのに圧痛を訴えないこともあります。まれに、硬くなっていないのに圧痛を訴えることもあります。圧痛があれば現在筋肉痛があると考えられ、硬結は長い間の筋緊張の持続を示す所見と考えられます。

治療の方法

 頭痛時の治療の中心となる薬物治療では、まずは消炎鎮痛薬の使用がすすめられます。アスピリンでいえば欧米では650~1000㎎/日の使用が多くみられますが、日本では330~660㎎/日がすすめられます。一方、消炎鎮痛薬の慢性的使用によってかえって頭痛が誘発されること(薬物乱用頭痛・コラム)があるので、薬剤量については専門家に相談してください。

 予防的投薬としては抗うつ薬、とりわけ三環系抗うつ薬がすすめられますが、口腔内乾燥、眠気、なかでも腸管のぜん動運動の低下などの抗コリン作用の発生には注意をすべきです。また、消炎鎮痛薬との併用として、エチゾラム(デパス)などの抗不安薬、エペリゾン(ミオナール)やチザニジン(テルネリン)などの筋弛緩薬(きんしかんやく)もすすめられます。頭痛体操も有効なことが多いので、薬剤を漫然と投与せずに頭痛体操を試してみる価値があると考えられます。

 日本神経学会の頭痛治療のガイドラインによる緊張型頭痛治療薬のエビデンスサマリーを表6に示します。

病気に気づいたらどうする

 片頭痛と同様に、器質的疾患を除外しておけば、ひと安心です。実際に、緊張型頭痛で病院を受診される患者さんが、画像診断で異常がまったくないことを知っただけで、頭痛が軽くなることが時々みられます。薬局で消炎鎮痛薬を購入して服用している場合に、服用量が過剰になり、むしろ薬物乱用頭痛になってしまうことがあります。この場合はできるだけ早く専門医に相談することが大切です。

荒木 信夫


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

内科学 第10版 「緊張型頭痛」の解説

緊張型頭痛(頭痛)

(3)緊張型頭痛(tension-type headache)
概念
 圧迫感または締めつけ感を呈する頭痛で,頭頸部筋肉における緊張が関係するとされている.
分類
 発作の出現頻度により稀発反復性緊張型頭痛,頻発反復性緊張型頭痛,慢性緊張型頭痛および緊張型頭痛の疑いの4型に分類される.
疫学
 わが国での有病率は22.3%(男性18.1%,女性26.4%)とされている.
病因・病態生理
 緊張型頭痛の発生機序については不明な部分が多いが,精神的,社会的ストレスが誘因といわれている.その他,不安,抑うつ,神経症などの精神的な因子,姿勢異常,頸椎病変,顎関節異常,眼科疾患など頭頸部の筋肉に緊張を与える病態が影響し緊張型頭痛を引き起こすと考えられている.
臨床症状・診断
 両側性に出現する圧迫感または締めつけられる感じをもつ軽度~中等度の頭痛で,日常的な動作による増悪はない.悪心はないが,光過敏または音過敏を呈することがある.緊張型頭痛においても片頭痛と同様に特徴的な他覚症状はない.頻発反復性緊張型頭痛のICHD-Ⅱによる診断基準を表15-17-4に記す.
治療
 薬物療法として鎮痛薬(アセトアミノフェン,NSAIDs),筋弛緩薬(塩酸エペゾリン,塩酸チザニジン)および抗不安薬(ジアゼパム)などが用いられる.非薬物療法として頸部指圧,鍼灸,タイガーバーム,催眠療法,頭痛体操などがある.[清水利彦・鈴木則宏]
■文献
日本頭痛学会・国際頭痛分類普及委員会訳:国際頭痛分類第2版 新訂増補日本語版,医学書院,東京,2007.
日本頭痛学会編:慢性頭痛の診療ガイドライン,医学書院,東京,2006.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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