絹紬(読み)きぬつむぎ

精選版 日本国語大辞典 「絹紬」の意味・読み・例文・類語

きぬ‐つむぎ【絹紬】

〘名〙 絹織物一種柞蚕(さくさん)紡糸または絹紡糸原料として織ったつむぎ福井県岐阜県などで産する。
浮世草子西鶴織留(1694)五「此質屋も分限に成て身のむかしをわすれ、いつとなく絹紬(キヌツムギ)不断着にして」

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デジタル大辞泉 「絹紬」の意味・読み・例文・類語

けん‐ちゅう〔‐チウ〕【絹×紬/繭×紬】

柞蚕糸さくさんしで織った薄地の平織物淡褐色を帯びて節がある。布団洋傘衣服などに用いる。けんちゅうつむぎ。

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改訂新版 世界大百科事典 「絹紬」の意味・わかりやすい解説

絹紬 (けんちゅう)

柞蚕(さくさん)生糸を経緯糸に使用して織り,精練漂白後,生デンプンの糊付仕上げをしたもの。ポンジーpongeeとも呼ぶ。平織で大幅と小幅がある。原色は淡黄茶色で,漂白するとクリーム色になる。薄地の普通品を絹紬と呼び,地の厚めの上級品は絹緞(けんどん)と呼ばれる。中国山東省河南省や,遼寧省の安東が集産地で,中国では織放しのものを繭紬,精練したものを練紬と分ける。日中戦争以前は柞蚕生糸を満州および山東省から輸入して織り,国内向けと対米輸出が盛んに行われた。まれに柞蚕絹紡糸を緯糸(よこいと)に,また,経緯ともに使ったものもある。絹織物としては安価でじょうぶであるが,染めにくいため原色で多く使われる。裏地,夜具地,洋装地に利用する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「絹紬」の意味・わかりやすい解説

絹紬
けんちゅう

柞蚕糸(さくさんし)を使い、平織にした薄地の織物で、ポンジーpongeeともいう。中国の山東(さんとう)地方でとれる野生繭から引いた糸で、家蚕の繭から引いた生糸に比べて、光沢が少なく、また漂白がしにくいのが欠点であるが、屋外飼育で手数がかからず、比較的収量も多いので、よく使われた。

 日本では、もと中国から柞蚕糸を輸入していたが、いまは長野県松本市付近で飼育され、紬(つむぎ)糸にして織物の緯糸(よこいと)として使われるにすぎない。従来、ふとん裏地や兵児(へこ)帯に用いられたが、いまは素朴な味が好まれ、夏服地、着尺地に使われる。

[角山幸洋]

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百科事典マイペディア 「絹紬」の意味・わかりやすい解説

絹紬【けんちゅう】

野蚕絹の柞蚕(さくさん)糸を用いて平織にした織物。ポンジーともいう。特有の光沢があり,淡黄色で,布面に節(ふし)が現れている。張りがあって丈夫なので裏地,夜具地などにする。中国山東省産が知られるが,日本でも長野県有明地方,岐阜県郡上(ぐじょう)八幡などで少量作られる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「絹紬」の意味・わかりやすい解説

絹紬
けんちゅう

繭紬とも書く。サクサン (柞蚕) の繭からとった糸で織った平織物。淡褐色で節がある。じょうぶなので,ふとん地,裏地,傘地などに用いられる。中国の山東省が多産地。

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普及版 字通 「絹紬」の読み・字形・画数・意味

【絹紬】けんちゆう

つむぎ。

字通「絹」の項目を見る

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