絶滅収容所(読み)ゼツメツシュウヨウジョ(英語表記)extermination camp

デジタル大辞泉 「絶滅収容所」の意味・読み・例文・類語

ぜつめつ‐しゅうようじょ〔‐シウヨウジヨ〕【絶滅収容所】

第二次大戦中にナチス‐ドイツがユダヤ人ロマなどの大量虐殺を目的として設置した、アウシュビッツヘウムノ・ベウゼッツ・ルブリン・ソビボール・トレブリンカの6つの強制収容所総称

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「絶滅収容所」の意味・わかりやすい解説

絶滅収容所
ぜつめつしゅうようじょ
extermination camp

ホロコーストを主要な目的としたナチス・ドイツの強制収容所。おもな収容所はアウシュウィッツ,ベウジェツ,ヘウムノ,マイダネク,ソビボル,トレブリンカで,ドイツ占領下のポーランドに置かれた。最も悪名高いアウシュウィッツ収容所には最大で 10万人が捕えられていた。毒ガス室は一度に 2000人を収容でき,1万2000人が日々ガスで殺され,焼却された。健全な身体とみなされた収容者は強制労働か大量虐殺の任務を命じられ,死ぬまで酷使された。絶滅収容所ができた背景にはナチスの政策方針転換がある(→ワンゼー会議)。1941年6月にドイツ軍がソビエト連邦への侵略を始めた頃,占領地域のユダヤ人をその近くの死刑執行所に連れて行き移動式の殺害装置を使って殺していたが,この方法は地元の人たちを不安にさせ,維持する難しさもあった。絶滅収容所の計画は逆に,対象者を収容所まで移送し,固定された殺害施設で殺すもので,大量の収容者を少ない人員で殺害することを可能にした。たとえばトレブリンカ収容所は職員 120人に対し,SS(ヒトラー親衛隊)隊員は 20~30人だけであった。
殺害には毒ガスが使われた。最初の絶滅収容所であるヘウムノ収容所では,トラックから排出される一酸化炭素を使って中毒死させていた(→一酸化炭素中毒)。アウシュウィッツ収容所ではチクロンBが使用された。マイダネクとアウシュウィッツは強制労働収容所でもあり,一方トレブリンカ,ベウジェツ,ソビボルは殺害のためだけの施設だった。ナチスはアウシュウィッツで 110~130万人,トレブリンカで 75~90万人,ベウジェツで 10ヵ月の操業の間に少なくとも 50万人を殺害した。トレブリンカ,ソビボル,ベウジェツは 1943年に閉鎖され,その任務はポーランドのゲットーに収容していたユダヤ人を殺したことで完遂した。アウシュウィッツは,1945年1月にソ連軍が到着するまで,ヨーロッパ中から収容者が運ばれた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android