絶対空間(読み)ゼッタイクウカン

デジタル大辞泉 「絶対空間」の意味・読み・例文・類語

ぜったい‐くうかん【絶対空間】

ニュートンによって導入された、すべての運動を記述するための基準となりうる静止空間。のちに、光の媒質と考えられた静止エーテルに対応する空間とも考えられたが、相対性理論によってその存在を否定された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「絶対空間」の意味・わかりやすい解説

絶対空間
ぜったいくうかん

ニュートンの運動の法則慣性系という座標系でのみ成り立つが、このように基本法則が成り立つ不変、無限、等質な空間のことを絶対空間という。太陽に固定された(静止した)座標系は近似的には慣性系であるが厳密にはそうでない。ニュートンは「仮説をつくらず」という自らの主張に反して、特定物体によらない絶対的な空間を設定してこの空間で運動の法則が成り立つとした。マクスウェル電磁場方程式電磁波の存在を予見したことはよく知られているが、電磁波の媒体として導入されたエーテルが電磁法則の絶対空間と考えられたことがあった。一般相対性理論によれば運動法則には広い相対性が成り立ち、任意の加速度をもつ座標系からみても運動法則は同じ形式をもつ。この立場からすれば、力学において絶対空間の概念は必要とされない。空間に絶対的に静止していると考える絶対静止系が考えられないのもいうまでもない。

田中 一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「絶対空間」の意味・わかりやすい解説

絶対空間
ぜったいくうかん
absolute space

特殊相対性理論の出現以前には,世界エーテルで満たされていると考えられており,したがってエーテルに対して静止している空間は特殊な意味があるとして,この空間を絶対空間と呼んだ。歴史的な概念である。

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世界大百科事典(旧版)内の絶対空間の言及

【空間】より

… さて,近代初期に,ガリレイ,デカルト,ニュートンらの手で,運動の問題について,新しい理論体系が誕生するに伴って,その運動の生起する空間そのものに関しても,新しい展開が生じた。とりわけ空間解釈で重要なのはニュートンの〈絶対空間absolute space〉であろう。ただしニュートンの空間概念についてはやや誤解があって,絶対空間は完全に物理的な概念ではなく,むしろ,それ自体,神の〈感覚体sensorium〉のごときものだと理解されている(《光学》第2版)。…

※「絶対空間」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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