統計法(読み)トウケイホウ

デジタル大辞泉 「統計法」の意味・読み・例文・類語

とうけい‐ほう〔‐ハフ〕【統計法】

国民にとって合理的な意思決定の重要な基盤情報となる公的統計の作成・提供に関する基本事項について定めた法律。昭和22年(1947)に公布された旧法の全部を改正し、平成19年(2007)に公布された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「統計法」の意味・わかりやすい解説

統計法
とうけいほう

公的統計の作成や提供に関し基本となる事項を定めることにより、公的統計の体系的かつ効率的な整備とその有用性の確保を図り、国民経済の健全な発展および国民生活の向上に寄与することを目的とする法律。平成19年法律第53号。2007年(平成19)5月に公布され、2009年4月から全面施行された。ここで、公的統計とは、国の行政機関地方公共団体などが作成する統計をさす。統計調査により作成される統計(調査統計)のほか、業務データを集計することにより作成される統計(業務統計)や、他の統計を加工することにより作成される統計(加工統計)も公的統計に該当する。

 統計法では、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(おおむね5年にわたる具体的な取組みの工程表)を作成することを定めている。予算人員に限りがあるなかで、公的統計を体系的・効率的に整備するための規定である。また、総務大臣が指定するとくに重要な統計を「基幹統計」として位置づけ、この基幹統計を中心として公的統計の体系的整備を図ることとしている。さらに、国の行政機関が行う統計調査については、調査間の重複を排除して調査に答える個人や企業の負担を軽減し、公的統計を体系的に整備する観点から、総務大臣が統計調査の審査調整を行うことも定めている。

 統計調査によって集められた情報(調査票情報)は、本来その目的である統計作成以外の目的のために利用・提供してはならないと定める一方で、統計の研究や教育など公益に資するために使用される場合に限り、二次的に利用することが可能であることも定めている。利用目的等に応じて、調査票情報の提供、オーダーメイド集計、匿名データの提供をあげている。

 なお、現行の統計法は、1947年(昭和22)に制定され、60年余にわたって統計整備の基本法であった従前の統計法(昭和22年法律第18号)と区別するために、新統計法とよばれることもある。

 旧統計法と新統計法のおもな違いとしては、以下の5点があげられよう。

 第一は、統計は公共財であることを明示した点である。旧統計法では統計の受益者が明示されず、実質的には政府のための統計であった。

 第二は、公的統計の範囲を国の行政機関・地方公共団体などが作成する調査統計、業務統計、加工統計と幅広くとらえた点である。旧統計法では、もっぱら調査統計を法律の対象としていた。

 第三は、公的統計を重要な基幹統計とその他の一般統計に分けているが、その条件を明示したことである。旧統計法でも指定統計とその他の統計(承認統計と届出統計)という枠組みはあったが、指定統計の選定基準は示されていなかった。

 第四は、統計の体系的整備について具体的に示したことである。旧統計法では明示されていなかった。

 第五は、公共財である統計情報の高度利用の促進について明文化したことである。旧統計法では、統計の行政利用目的や調査情報の秘密保持が優先され、調査表情報を行政以外の目的に利用することに強い制限がかかっていた。

[飯塚信夫 2020年9月17日]

『阿藤誠「新統計法の意義」(『家族社会学研究』第21巻第1号所収・pp.128~135・2009・日本家族社会学会)』

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改訂新版 世界大百科事典 「統計法」の意味・わかりやすい解説

統計法 (とうけいほう)

日本の社会経済の実態を数量的に把握する重要な手段たる官庁統計の真実性を確保し,統計調査の重複を除き,統計の体系を整備するために,GHQの要請で来日した統計使節団の勧告に基づいて,1947年に公布された法律。日本の官庁統計制度は指定統計,届出統計,統計報告の3本の柱で構成されている。統計法は指定統計と届出統計について定める。中でも指定統計は国の統計の中核となるもので,総務庁長官が指定し,その旨を公示したものである。指定を受けた統計は,国勢調査をはじめとして100以上に及んでいる。指定統計の作成のためには,各省や地方公共団体は目的,事項,範囲,期日,方法,集計事項,集計方法等々につき総務庁長官の承認を受けねばならず,指定統計調査のためには人または法人は報告義務を課されており,義務違反には罰則が定められている。第2次大戦中の日本の統計が国民に公表されていなかったことへの反省から,調査実施者は指定統計調査の結果を公表することが義務づけられている。
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百科事典マイペディア 「統計法」の意味・わかりやすい解説

統計法【とうけいほう】

官庁統計の真実性の確保,統計調査の重複除去,統計体系の整備,統計制度の改善を目的とする法律(1947年)。国勢調査をはじめ,重要な統計を指定統計として規定するほか,統計官および統計主事などについて定める。2007年5月,〈行政のための統計〉から〈社会の場基盤としての統計〉へとして,60年ぶりとなる全面的な改正が交付された。新統計法は(1)公的統計の体系的整備,(2)統計データの利用促進と秘密の保護,(3)統計委員会の設置を骨子とし,公的統計をその体系をなす機関統計とそれ以外の統計に区分して整備すること,統計データの利用に関する規定を整備すること,公的統計を総合的かつ体系的に整備するため基本計画案についての調査審議等統計法の定める事項を処理する統計委員会を内閣府に設置することなどを定めている。
→関連項目統計

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「統計法」の意味・わかりやすい解説

統計法
とうけいほう

昭和 22年法律 18号。平成 11年改正。統計の真実性を確保し,統計調査の重複を除き,統計の体系を整備して,統計制度の改善発達をはかることを目的とする法律。総務大臣が指定した指定統計を行うため,内閣府および各省に統計官,地方公共団体に統計主事をおき,必要な場所への立入り,検査,資料の提供の強制および質問権を認め,関係行政機関の長には資料の提出,説明の要求および協力を求めることができることなどを定める。なお,国勢調査,指定統計調査以外の統計調査についても規定がある。

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世界大百科事典(旧版)内の統計法の言及

【統計】より

…統計の実地調査の大部分はこれらの中央省庁の企画にもとづいて,県および市町村の統計担当課,係が随時雇用される調査員を指揮して行い,その結果は中央省庁に集められて,集計,整表のうえ公表される。 中央省庁および地方公共団体等が行う統計調査については,統計法および統計報告調整法(1952公布)が基本的な規定を与えている。統計法においては国勢調査のほか,総務庁長官の指定した統計を指定統計として,それについて調査結果の統計以外の目的への利用の禁止,秘密の保護,結果の公表などを統計作成者に義務づける一方,国民の側には調査に応ずる義務,虚偽の申告に対する罰則などを規定している。…

※「統計法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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