統計グラフ(読み)とうけいグラフ(英語表記)statistical chart

改訂新版 世界大百科事典 「統計グラフ」の意味・わかりやすい解説

統計グラフ (とうけいグラフ)
statistical chart

統計図表ともいう。統計をとる目的は,集団全体についての特性をつかむことであり,資料をうまく分類整理して,統計表や統計グラフで表すと,全体のようすがよくわかる。統計グラフには,次に示すようにいろいろな種類があり,調査の目的や分類標識(質的分類,量的分類)により,適当に使い分けることがたいせつである。

質的分類にも,量的分類にも用いられ,各標識についての絶対量の大きさを比較する。絵グラフ(図1)は,その内容を写した絵の面積や同じ絵(アイソタイプ)を並べた個数によって比較するもので,一般の人にも親しみやすく展示用の図表などに多く用いられるが,書くのに手数がかかり,精密さに欠けることもある。棒グラフ(図2)は,基線の上に等間隔で棒を立てその長さで比較する。絶対量を比較するため,目盛線では基線の位置にある端点を0とし,棒の長さの大きいものも途中で切れ目を入れることはできるだけ避けたい。やむをえないときは何本かの棒を重ねて表す。定まった順序がなければ大きいものから順に配列するが,“その他”という項があれば最後におく。

質的分類にも,量的分類にも用いられ,構成内容の比率(全体を100%として)を比較する。円グラフ(図3)では,中心を通る真上の垂直半径を出発点とし,時計の針の回る方向に回るのがふつうで,定まった順序がないときは大きい%のものから順に並べ,“その他”の項があれば最後におく。帯グラフ(図4)は,帯の長さを分割して%を表したもので,円グラフと同様に利用されるほか,いくつかの比率を相互比較するのに便利である。この場合の配列は各帯とも同じ順序にする。

一つの量の動きに対する他の量の変化の状態を表す関数グラフで,とくに時間の経過に応じて変化する量を考える場合(時系列という)が多く,折れ線(図5)または曲線で表す。棒グラフでは絶対量の大小を長さの長短で表すのに対し,線グラフでは変化の状況を高さの増減で表すため,基線の位置における目盛を必ずしも0にしなくてよい。前者では長さの比が問題(比例尺度)だが,後者では高さの差が問題(間隔尺度)である場合が多い。

度数分布をグラフで表す方法として,ヒストグラム(柱状グラフ),度数分布折れ線(度数分布多角形),度数分布曲線がある。ヒストグラム(図6-a)の外観は棒グラフと似ているが,棒グラフでは各棒が孤立していてそれぞれの長さの比較が問題になるのに対し,ヒストグラムでは各柱が密着し全体での一つの図形としての形状が問題となり,底辺の任意の区間の上にある図形(図6-aの灰色の部分)の面積がその区間に対する度数を表す。ヒストグラムの各柱の上底の中点を結んでできる度数分布折れ線(図6-b)や,その極限としての度数分布曲線(図6-c)についても同様で,高さでなくて面積が問題となる。線グラフと比較してみても,例えば図5の折れ線で,東京での3月の平均気温はその点での高さ8.4℃で示されるが,図6-bで身長142.5cmに対する高さはこの身長の生徒の人数を示すものではない。142.5cmちょうどの人数が問題でなく142.5~157.5cm間に含まれる人数が問題である。度数分布の平均値M,メジアンMe,モードMoの位置も,度数グラフと底辺とが囲む図形から求められる(図7)。

 M……図形の重心の真下

 Me……面積を2等分する縦線の真下

 Mo……山の頂上の真下

二つの標識について分類した場合の度数分布を,図6-aのヒストグラムに相当するグラフで表すには,図8-bのような立体図(ステレオグラム)を用いねばならない。これは見た目にはおもしろいので展示用などに使われるが,書くのに手数がかかり,平面図では裏側の部分を正確に表すことが困難なので,図8-aのような散布図が使われ,身長と体重との間の関係を概観することができる。

グラフの用法について基本的な原則を述べたが,いろいろな用途に応じて,適宜に組み合わせ変形して利用されることもある。地理的にどんな分布を示すかを地図上に記した統計地図,目盛を対数で表した対数目盛グラフなどもこの延長とみてよい。統計グラフの生命は,それが何を物語っているかがすぐわかるように単純明確に表現することである。展示用,事務用,研究用と使用者によって表示の方法も異なろうが,まず何のグラフかわかるような適切な表題をつけ,いつ,どこで,だれが調べたかを示す記録,必要に応じては具体的な数値など適当な位置に入れておくことが有効である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「統計グラフ」の意味・わかりやすい解説

統計グラフ
とうけいぐらふ

統計資料を分類、整理した結果を図で表したもの。以下に述べるようにいろいろな種類があるが、標識の内容に応じて適当なものを選び、記述したい事柄がわかりやすく、明確に伝えられるようにくふうすることがたいせつである。

 標識が質的なもの(地名、品名など)である場合は、分類された各項目に対応する度数などをそれに比例した長さの絵や棒で表す絵グラフ、棒グラフ、対応する相対度数(比率)をそれに比例した帯の部分の長さ、円の中心角の大きさで表す帯グラフ、円グラフがそれぞれ用いられる。とくに、各地域に対応する度数などを表すため、地図の上にドットなどを記入したカルトグラムcartogram(統計地図)が用いられる。また、標識が量的なものである場合は、階級の幅を底辺とし、各階級値に対応する度数に比例した高さをもつ長方形を描くヒストグラムhistogram(柱状グラフ)、ヒストグラムで各長方形の上の辺の中点を順に結んでつくる度数折れ線などが用いられる。折れ線の両端はそれぞれ一つ手前、一つ先の階級の度数をゼロと考えて決める。度数折れ線と横軸の囲む図形を度数多角形といい、その面積はヒストグラムの面積の総和に等しい。相対度数、累積度数についてもそれぞれ相対度数折れ線、累積度数折れ線が用いられる。そのほか二つ以上の標識に関する統計グラフとして相関図や立体図表などがある。

[植竹恒男]


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