結婚退職制(読み)けっこんたいしょくせい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「結婚退職制」の意味・わかりやすい解説

結婚退職制
けっこんたいしょくせい

労働者の結婚という理由をもとに、当該労働者の意思能力、勤務条件などにかかわりなく、一律に雇用者としての地位をなくす制度。一般に女子労働者を対象にする。出産という理由をもとに雇用者としての地位を喪失する制度とあわせて結婚・出産退職制ともいう。通常の場合に比べてとくに低い定年年齢を定め、当該の年齢に達した場合に、当該労働者の意思、能力、勤務条件などにかかわりなく、一律かつ無条件に退職させる若年定年制(早期定年制ともいう)と共通の問題をもっている。企業は、この制度によって労働力の年齢構成を自動的に調整することができる。このように勤続年数についての差別性別だけにかかわり、それ以外の合理的な理由をもたない場合には、差別的条件について定めた労働協約就業規則労働契約中の当該部分は、憲法に定める平等原理を基調とする公序良俗に反することから、無効であるとされる。

[三富紀敬]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「結婚退職制」の意味・わかりやすい解説

結婚退職制
けっこんたいしょくせい

労働協約就業規則あるいは個別的な労働契約において,女子労働者が結婚したときには退職しなければならないと定める制度。労働基準法性差別については賃金に関するものしか禁止していないこともあって (4条) ,かつてはこの制度は広く見受けられた。しかし判例によって,このような制度は性別を理由とする不合理な差別であって憲法 14条の趣旨に反し,さらに結婚の自由を侵害するので公序良俗違反 (民法 90) として無効という評価が定着した。現在では雇用機会均等法 11条が妊娠・出産退職制や女子若年定年制などと並んで,明示的にこれを禁止している。

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世界大百科事典(旧版)内の結婚退職制の言及

【女性労働】より

…この規定や民法90条,憲法14条の平等原則を活用することによって,賃金以外の性による差別問題に対処してきた。つまり女性の結婚退職制,出産退職制,若年退職制が合理的理由のないかぎり公序良俗に反して無効となった。しかし,それだけでは雇用平等実現には限界があり,より積極的に男女の雇用上の差別をなくすために男女雇用機会均等法が制定された。…

※「結婚退職制」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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