経帷子(読み)きょうかたびら

精選版 日本国語大辞典 「経帷子」の意味・読み・例文・類語

きょう‐かたびら キャウ‥【経帷子】

〘名〙 仏教葬式で、死者に着せる衣。白麻などで作り、縫い目の糸はとめないでおき、衽(おくみ)や背には名号題目などを書く。寿衣(じゅい)経衣(きょうえ)
太閤記(1625)六「上村経かたびらの出立にて籠城せしかば」

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デジタル大辞泉 「経帷子」の意味・読み・例文・類語

きょう‐かたびら〔キヤウ‐〕【経帷子】

仏式葬儀で、名号・経文・題目などを書いて死者に着せる衣。白麻などで作る。経衣きょうえ
[類語]死に装束

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改訂新版 世界大百科事典 「経帷子」の意味・わかりやすい解説

経帷子 (きょうかたびら)

仏式で死者を葬るとき,死装束(しにしようぞく)として着せる浄衣。経衣(きようえ)ともいう。白の麻や木綿,または紙布などでつくる。裏地をつけずにひとえとし,縫い目の糸はとめないでおく。衽(おくみ)や背に〈南無阿弥陀仏〉〈南無妙法蓮華経〉の名号・題目,また真言(陀羅尼だらに)),種子(しゆじ)(梵字),経文などを書き,朱印を押す。《不空羂索真言経(ふくうけんじやくしんごんきよう)》に,重罪のものもこれを着すれば解脱(げだつ)を得るとあり,死者もこれを身につけると生前の罪が消え,地獄の責め苦をまぬがれ,浄土に往生できるとの信仰が生じた。死者に着せることは,真言宗で鎌倉時代ごろから始まったらしい。立山山麓の芦峅(あしくら)寺では,昭和初年まで布橋灌頂(ぬのはしかんぢよう)が行われていたが,このとき用いられた白布は大灌頂に入行した女性信者らにわけられ,彼女らはこれを経帷子に仕立て,自身の死出の旅装束とした。浄土宗の信者が五重伝法(ごじゆうでんぼう)で着る浄衣も経帷子の一種である。背面に〈南無阿弥陀仏〉の名号を書き,朱の仏判を押すが,本人が死んだときにはこれを死装束とする。巡礼者が着る袖無しも経帷子であり,生前に着るので寿衣(じゆえ)という。経帷子は,今日,葬送儀礼に関する重要な民俗用語となっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「経帷子」の意味・わかりやすい解説

経帷子
きょうかたびら

僧の姿になぞらえて白木綿に経文を記した死装束。明衣(みょうえ)とも浄衣(じょうえ)ともいう。たとえ地獄に落ちても陀羅尼(だらに)の威力で浄土に生まれるとする密教経典の所説から生じた習俗で、書式は宗派によって異なる。死者と有縁の女性が集まって何人かが引っ張り合って同時に縫ったり、脚絆(きゃはん)や足袋(たび)を別の人が縫い、糸尻(いとじり)を止めないなどの作法がある。生前に全国霊山霊場を巡って寺印を押して用意するなどの習俗もみられる。

[藤井正雄]

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百科事典マイペディア 「経帷子」の意味・わかりやすい解説

経帷子【きょうかたびら】

死者に着せる浄衣(じょうえ)。経文,名号,陀羅尼,種子(しゅじ)(悉曇(しったん)文字)等を書き,死者の罪業を滅し菩提(ぼだい)を得ると説く。真言宗で鎌倉時代ごろから始まったとされる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「経帷子」の意味・わかりやすい解説

経帷子
きょうかたびら

死者に着せる着物。経典中の語句,または仏陀の名,仏教に用いる呪句,仏陀や菩薩の象徴である梵字などを記した。

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葬儀辞典 「経帷子」の解説

経帷子

仏式で葬る時、死者に着せる白い着物。最近では、生前愛用していた服を着せることもあります。

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