組織学
そしきがく
histology
生物組織の構造と相互関係を研究する学問をいう。組織は細胞と細胞間物質によって構成されるので、組織学の対象も必然的に細胞のレベルまで下がるが、細胞学が細胞の内部構造や機能の研究に重点を置くのに対して、組織学はむしろ細胞集団としての組織を扱い、また組織によって成り立つ器官の研究も重要なテーマである。
方法としては光学顕微鏡による組織切片の観察が現在においてももっとも基本的であるが、近年の透過型および走査型電子顕微鏡の発達は、組織学の大きな発展をもたらしつつある。またオートラジオグラフィー、免疫組織化学などを含む組織化学の技術も、主として組織内の特定の生体物質の分布を調べるのに有効な方法である。生きたままの組織を観察するためには位相差顕微鏡や微分干渉顕微鏡が用いられる。歴史的にみると、組織学は顕微鏡の発明とともに発達し、その後は相次ぐ顕微鏡標本作製法の改良(固定法、染色法、薄切(はくせつ)技術)によって飛躍的に進歩した。
現在では、動物組織は上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織、遊走細胞組織に大別され、植物組織は表皮系、維管束系、基本組織系に分類されたり、あるいは表皮、皮層、中心柱に分類されたりする。
[八杉貞雄]
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組織学
そしきがく
histology
生物学の形態学の一分科であり,組織を研究の対象としている学問。組織は細胞と細胞の生産したものとから成るので,細胞学よりも総合的な見方がなされている。形態学のみならず,組織の段階での生理学的研究,組織としての代謝の特徴の研究が行われるようになって,学問として組織生理学,組織化学が成立するようになった。広義の組織学にはこれらの分野も包含するという見方もある。
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そしき‐がく【組織学】
〘名〙 生物の組織の構成、発生、
分化、機能などを研究する生物学の一分科。従来は形態的側面が主要な内容をなしたが、近年は生理学的・生化学的研究が広く行なわれつつある。〔生物学語彙(1884)〕
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デジタル大辞泉
「組織学」の意味・読み・例文・類語
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そしきがく【組織学 histology】
解剖学の中の一分野。特定の構造と機能をもった細胞どうしが目的に応じて集合し,機能上,構造上の合目的性をもった一つの有機体を形成したものを組織といい,この組織という材質の組合せとして生体を研究する学問が組織学である。これに対して,生体を器官という部品からなりたつ構造として,その微小な構築まで研究していく学問は,顕微解剖学microscopic anatomyとよばれる。もっとも組織学と顕微解剖学とはかなり混同して用いられることばで,ときにはほとんど同義語として理解されることもある。
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世界大百科事典内の組織学の言及
【解剖学】より
…しかし解剖学が医学の教育に用いられるようになり,進歩をとげるのは幕末~明治に入ってからである。 現在の解剖学は肉眼的解剖学macroscopic anatomyと顕微鏡的解剖学microscopic anatomyに大別されているが,前者はさらに骨学,靱帯学,筋学,脈管学,神経学,内臓学,感覚器学などに分けられ,後者は組織学histologyとほぼ同義に用いられる。組織学は19世紀ころになって体系づけられた。…
【解剖学】より
…しかし解剖学が医学の教育に用いられるようになり,進歩をとげるのは幕末~明治に入ってからである。 現在の解剖学は肉眼的解剖学macroscopic anatomyと顕微鏡的解剖学microscopic anatomyに大別されているが,前者はさらに骨学,靱帯学,筋学,脈管学,神経学,内臓学,感覚器学などに分けられ,後者は組織学histologyとほぼ同義に用いられる。組織学は19世紀ころになって体系づけられた。…
【形態学】より
…いいかえれば,個体および個体以下のレベルでおこる生命現象のうち視覚的にとらえられるものを対象とするのが形態学であるが,対象物のレベルや研究目標によっていくつかに類別することができる。 ある一種の生物についてこのような研究がなされる場合は,多少とも生理的機能との関連があるため生理形態学ともよばれ,解剖学,組織学,細胞学,発生学などがこれに含まれる。この種の形態学は,生体内の機能や作用を主対象とする生理学と対比されることが多い。…
【組織】より
…心臓は心筋,血管,神経などの組織からなる器官であり,それらの組織が一定の秩序をもって結合し,一定の機能を果たしている。 組織を研究対象とする生物学の分野を組織学という。細胞学がおもに細胞の一般性や細胞内部の問題に注目するのに対し,組織学においては相互に有機的関連をもつ細胞間の結合様式,さらに組織相互の関係が研究される。…
※「組織学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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