累進税逆進税(読み)るいしんぜいぎゃくしんぜい

改訂新版 世界大百科事典 「累進税逆進税」の意味・わかりやすい解説

累進税・逆進税 (るいしんぜいぎゃくしんぜい)

租税は主として課税標準税率により規定されるが,課税標準の増大に伴って税率が上昇する税を累進税といい,課税標準の増大とともに税率の低下するような税を逆進税という。納税者の租税負担能力は今日では主として所得にあると考えられているが,累進税や逆進税も,一般的には所得に対する租税負担額の割合が所得の増大に伴って上昇するか低下するかによって定義する。

 優れた租税の要件として公平の原則が重視されるが,この原則との関係で租税の累進性とか逆進性とかが論ぜられることが多い。公平の原則にかなうのは累進税であるというのが今日ふつうとられる想定であるが,公平性の基準としてあげられる支払能力説や利益説から一義的に累進税がでてくるわけではない。仮に累進税のほうが公平の原則によくかなうとしても,優れた租税のもう一つの重要な要件は効率性の原則であり,両者間にはしばしばトレード・オフ関係が存在する。典型的な累進税である個人所得税をみると,日本の所得税限界税率は10%から50%まで急激に上昇しているのに加えて,地方税である道府県民税は2%と3%,市町村民税は3%,8%,11%という累進税率構造をとっているから,国の所得税と地方住民税をあわせると,所得に対する累進税率は15%から64%にまで上昇し,かなり急激な累進税率構造を形成している。このような高い累進税構造は世界でもまれな例であり,他の諸国ではもっと高い税率から始まって,もっと低い税率が最高限界税率になっている。
租税
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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