紫の(読み)むらさきの

精選版 日本国語大辞典 「紫の」の意味・読み・例文・類語

むらさき‐の【紫の】

① 紫草の根で染めた色の美しいところから、「にほふ」にかかる。
万葉(8C後)一・二一「紫草能(むらさきノ)にほへる妹をにくくあらば人妻ゆゑに吾れ恋ひめやも」
② 紫の色の意で「色」にかかる。
※玉葉(1312)雑三・二二八九「紫の色に出でては言はねども草のゆかりを忘れやはする〈二条院讚岐〉」
③ 紫の色が「濃い」意で、「濃(こ)」と同音を含む地名「粉滷(こがた)」にかかる。
※万葉(8C後)一六・三八七〇「紫乃(むらさきノ)粉滷の海にかづく鳥珠かづき出ば吾が玉にせむ」
紫色名高い色であったところから、地名「名高」にかかる。一説に紫草が染料として有名であったところからとも。また、「紫」は借字で、地名「村崎」であるという説もある。
※万葉(8C後)七・一三九二「紫之(むらさきの)名高の浦のまなごつち袖のみ触れて寝ずかなりなむ」
⑤ 藤の花が紫色をしているところから、「藤」と同音を含む地名「藤江」「藤坂」「藤井」などにかかる。
※続後撰(1251)春下・一五七「むらさきの藤江の岸の松が枝によせて返らぬ波ぞかかれる〈後嵯峨院〉」

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デジタル大辞泉 「紫の」の意味・読み・例文・類語

むらさき‐の【紫の】

[枕]
ムラサキの根で染めた色の美しいところから、「にほふ」にかかる。
「―にほへる妹を憎くあらば」〈・二一〉
紫色が名高い色であったところから、地名「名高なたか」にかかる。
「―名高の浦の砂地まなごつち」〈・一三九二〉
濃く染まる意から、「」と同音を含む地名「粉滷こがた」にかかる。
「―粉滷の海にかづく鳥」〈・三八七〇〉

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