紙子仕立両面鑑(読み)かみこじたてりょうめんかがみ

精選版 日本国語大辞典 「紙子仕立両面鑑」の意味・読み・例文・類語

かみこじたてりょうめんかがみ かみこじたてリャウメンかがみ【紙子仕立両面鑑】

浄瑠璃世話物。三巻。菅専助作。明和五年(一七六八大坂北堀江座初演。大坂の万屋(よろずや)助六島原の遊女揚巻との心中事件を題材とする。里へ帰された助六の妻お松の貞節を描く大文字屋の段が名高い。助六心中

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改訂新版 世界大百科事典 「紙子仕立両面鑑」の意味・わかりやすい解説

紙子仕立両面鑑 (かみこじたてりょうめんかがみ)

人形浄瑠璃。世話物。3段。菅専助作。1768年(明和5)12月大坂北堀江市の側芝居,豊竹此吉座初演。角書〈助六揚巻〉。1699年(元禄12)12月に起こった大坂千日寺心中は,翌年すぐに京・大坂の歌舞伎に仕組まれ,人形浄瑠璃においても《大坂千日寺心中物語》が上演された(1700年と推定)。この《千日寺心中》に始まって,改作《大坂すけ六心中物語》や都一中の《助六心中幷せみのぬけがら》が作られてゆき,〈助六心中〉の系統が形成される。本作も〈助六心中〉の系統を引くもので,内容は,上の巻〈万屋の段〉〈新清水勘当の段〉。中の巻〈東堀堀止の段〉〈本町大文字屋の段〉。下の巻〈楠葉親里の段〉〈枚方堤の段〉〈道行涙の淀川〉〈長柄晒場の段〉からなる。新町の傾城揚巻に深く馴染んだ万屋助六は,揚巻の身請金のことで伝九郎に騙され,父助右衛門からは勘当される。助六の妻お松は実家大文字屋に戻り,そこで兄栄三郎の勧めに従い,夫を助けるため新町の勤め奉公を決意する。お松と母の妙三(みようさん)が悲嘆にくれているところに助右衛門が訪れ,揚巻を身請した証文を渡す。助六をめぐる人々の恩愛のからみ合いを描くこの〈大文字屋〉が有名で,11世片岡仁左衛門によって歌舞伎化もされ,片岡十二集一つに選ばれた。仁左衛門は,助右衛門とチャリ敵の番頭権八の2役を替わって演じ,以来これが慣例化し,役者の腕の見せどころになっている。
助六
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紙子仕立両面鑑」の意味・わかりやすい解説

紙子仕立両面鑑
かみこじたてりょうめんかがみ

浄瑠璃義太夫節(じょうるりぎだゆうぶし)。世話物。3段。菅専助(すがせんすけ)作。1768年(明和5)12月、大坂・北堀江座初演。都一中(みやこいっちゅう)の語物『萬屋助六(よろずやすけろく)心中』などで知られた揚巻(あげまき)助六の情話が題材で、並木丈輔(じょうすけ)の浄瑠璃『萬屋助六二代(にだいがみこ)』(1735)を書き替えた作品。萬屋助六は傾城(けいせい)揚巻におぼれ、悪番頭権八らの謀計により父助右衛門(すけえもん)から勘当され、妻お松とも離別、揚巻と心中しようとするが、権八らの悪事が発覚して助かる。眼目は中の巻「大文字屋」で、実家に戻ったお松が夫を救うため身売りしようとするのを、その貞心に感じた助右衛門が揚巻身請けの金を出し、年季証文を持って訪れる場面。歌舞伎(かぶき)では11世片岡仁左衛門(にざえもん)が復活して助右衛門・権八の二役を勤め当り芸とし、以来、その家の芸「片岡十二集」の一つになった。

[松井俊諭]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「紙子仕立両面鑑」の解説

紙子仕立両面鑑
かみこじたて りょうめんかがみ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
菅専助
補作者
勝歌女助
初演
明治3.5(京都・南側芝居)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

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