約束手形
やくそくてがた
promissory note
振出人が主たる債務者として、受取人その他手形の正当な所持人に対し、一定期日に一定金額を支払うことを約束する手形。振出人が支払人に対し、一定金額の支払委託をする為替(かわせ)手形・小切手とは本質的に異なる。しかし、有価証券、設権証券、流通証券(指図(さしず)証券)、要式証券、無因証券(不要因証券)、文言証券、呈示証券、受戻証券などの点では為替手形・小切手と同様である。為替手形では、振出人は単なる償還義務者にすぎず、引受人が手形上の主たる義務者であるのに対し、約束手形では振出人が手形上の主たる義務者であり、振出人が手形上の絶対的な支払義務者となる。
約束手形は一般に、代金後払取引(信用取引)での代金支払いの方法として利用されている。たとえば、買い手Aが売り手Bから商品を仕入れるに際して、代金支払いを商品の転売代金の入金により行いたい場合に、Bの承諾を得て、その金額について予定転売時期を満期に、Aの取引銀行を支払場所にして、B宛(あて)に振り出される。この場合、Bは、約束手形を取引銀行で割り引くことにより満期前に代金を回収するか、満期まで待って手形金の支払いを受けるかすることになる。
[太田和男]
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約束手形
やくそくてがた
promissory note
振出人がその相手方である受取人または,その指図人に対し,一定の金額の支払いを約束する手形。為替手形が支払人にあてて一定金額の支払いを委託する証券 (支払委託証券) であるのに対して,約束手形は一定の金額の支払いを約束する証券 (支払約束証券) である点が異なる。沿革的には為替手形と同じく,ヨーロッパにおいて中世以降用いられ,銀行制度の発達とともに一般化した。経済的には,通常の金銭消費貸借において,借主が貸主に対して,いわば消費貸借証書の代用 (貸付手形) として利用し,あるいは売買代金の支払いの方法として用いられ (商業手形) ,これにより買主は代金支払期日まで自己の信用を利用できるし,また売主は手形割引によってただちに売買代金を取得できる。
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約束手形
企業間の取引で、手形の振出人(支払者)が、受取人に対して代金の後払いを約束する証書のこと。受取人は手形に記された期日に金融機関で手形を現金化することができるが、この期日に振出人の口座に残金がなければ不渡りとなる。一般的に受取人が現金を受け取るまでの期間が長く、中小企業にとって資金繰りの負担が重いことなどから、政府は産業界に対し、2026年をめどに利用の廃止を求める方針を示した。
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約束手形【やくそくてがた】
振出人が自己を主たる債務者として手形金額の支払を約束する形式の手形。為替手形の振出人が第三者に支払を委託するのに比べて大きく相違する。しかし振出人は為替手形の引受人と同様に手形の主たる支払義務者である。実際上,為替手形よりも広く利用されている。→手形貸付け
→関連項目コマーシャル・ペーパー|農業手形
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やくそく‐てがた【約束手形】
〘名〙 振出人が名宛人に対し、一定の金額を一定の期日・場所で支払うことを約束する手形。振出人がはじめから債務者となるので為替手形のような引受はない。約手。〔仏和法律字彙(1886)〕
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デジタル大辞泉
「約束手形」の意味・読み・例文・類語
やくそく‐てがた【約束手形】
振出人が、受取人またはその指図人もしくは手形所持人に対し、一定の期日に一定の金額を支払うことを約束する手形。約手。→為替手形
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やくそくてがた【約束手形】
振出人みずからが受取人またはその指図人に対して一定金額(手形金額)の支払を約束した証券。為替手形とともに手形の一種であるが,為替手形が第三者への支払委託の形式をとるのに対して,約束手形はみずから支払を約束する形式をとる点で異なっている。約束手形の振出人は,手形の発行者であるとともに,手形金額支払の主たる債務者でもある。このため,支払人の存在が不要で,引受けや,引受拒絶に基づく遡求の制度がない。 日本の国内で流通している手形の大部分は約束手形である。
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世界大百科事典内の約束手形の言及
【手形】より
…現在の手形制度は,後述にあるように中世におけるイタリアおよびその他の地中海沿岸地方の諸都市の両替商が発行した手形にその起源があるとされているが,日本でもすでに鎌倉時代には一種の証書が存在し,送金の用に供されていた。現在の手形には,振出人がみずから自己の債務支払を約束する約束手形と,振出人が支払人にあてて支払を委託する為替手形の2種類がある。小切手が金銭の代りをなすものとしてもっぱら支払手段としての機能のみを有するのに対して,手形は信用取引の円滑化という,より広範な経済的機能を果たしている。…
※「約束手形」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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