糸鞋(読み)しがい

精選版 日本国語大辞典 「糸鞋」の意味・読み・例文・類語

し‐がい【糸鞋】

〘名〙 絹糸を編んでつくったくつ。幼帝公達をはじめ、楽人舞人などが用いたもの。いとぐつ。しあい
※延喜十三年亭子院歌合(913)「おほきなる童四人、みづらゆひしがいはきて舁(か)けり
増鏡(1368‐76頃)八「兵部卿隆親は、しかゐをはきて」

し‐あい【糸鞋】

〘名〙 (「あい」は「鞋」の慣用音) =しがい(糸鞋)
太平記(14C後)三九「白衣神人数千人の国民等歩列る。時の関白良基公は柳の下重に絲鞋(シアイ)を召て、当(あた)りも耀く計に」 〔老学庵筆記‐二〕

いと‐ぐつ【糸鞋】

〘名〙 糸を編んで作った、括(くく)り緒のあるくつ。幼童、舞人および諸衛六位が用いたもの。いとのくつ。しがい。
※太平記(14C後)三九「柳の下重(したがさね)に糸鞋(シアイ)(〈注〉イトクツ)を召て」

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デジタル大辞泉 「糸鞋」の意味・読み・例文・類語

いと‐ぐつ【糸×鞋】

しがい(糸鞋)

し‐あい【糸×鞋】

しがい(糸鞋)

し‐がい【糸×鞋】

絹糸を編んで作った履物貴族子弟や楽人・舞人などが用いた。いとぐつ。しあい。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「糸鞋」の読み・字形・画数・意味

【糸鞋】しあい

絹糸のくつ。〔老学庵筆記、二〕禁中(もと)絲鞋局り。~壽皇(孝宗位し、惟だに臨むに絲鞋を(もち)ひ、きてはち羅鞋を以て之れに易(か)ふ。に此の局を廢せり。

字通「糸」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の糸鞋の言及

【くつ(沓∥履)】より

…半靴(ほうか)は靴を簡略にしたもので,靴先をとがらせ,靴帯(かたい)を省き,平安時代から武士が乗馬に用いた。鞋には,錦鞋(きんかい),挿鞋(そうかい),糸鞋(しかい),草鞋(わらぐつ)がある。牛皮底の紫色綾布のくつは挿鞋といい天皇や皇后が上ばきに,表を錦,内側を絹布で張った錦鞋は女官が,糸を編んだ糸鞋は幼帝や皇太子,舞楽の舞人が用いた。…

【束帯】より

…袍の上から革帯(かくたい)を締めるが,石帯とか玉帯といわれ,後ろ腰に当たる部分に石や玉の飾りがついている。履に数種あり,浅沓(あさぐつ)は平常用とし,靴(か)は儀式や行事に,深沓は雨泥の日に,半靴(ほうか)は乗馬のとき,挿鞋(そうかい)は天皇が殿上ではく沓,糸鞋(しかい)は幼童や舞楽に用いられる。(しとうず)はいわゆる靴下である。…

【舞楽装束】より


[歌舞の舞人装束]
 歌舞とは,神楽(御神楽(みかぐら)),大和(倭)舞(やまとまい),東遊(あずまあそび),久米舞,風俗舞(ふぞくまい)(風俗),五節舞(ごせちのまい)など神道系祭式芸能である。〈御神楽〉に使用される〈人長舞(にんぢようまい)装束〉は,白地生精好(きせいごう)(精好)の裂地の束帯で,巻纓(けんえい∥まきえい),緌(おいかけ)の,赤大口(あかのおおくち)(大口),赤単衣(あかのひとえ),表袴(うえのはかま),下襲(したがさね),裾(きよ),半臂(はんぴ∥はんび),忘緒(わすれお),(ほう∥うえのきぬ)(闕腋袍(けつてきほう)――両脇を縫い合わせず開いたままのもの),石帯(せきたい),檜扇(ひおうぎ)(),帖紙(畳紙)(たとうがみ),(しやく)を用い,六位の黒塗銀金具の太刀を佩(は)き,糸鞋(しかい)(糸で編んだ(くつ))を履く。手には鏡と剣をかたどった輪榊を持つ。…

※「糸鞋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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