糸満市(読み)イトマンシ

デジタル大辞泉 「糸満市」の意味・読み・例文・類語

いとまん‐し【糸満市】

糸満

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日本歴史地名大系 「糸満市」の解説

糸満市
いとまんし

面積:四六・四〇平方キロ

沖縄本島南部の西側に位置する。北は豊見城とみぐすく市、東は東風平こちんだ町・具志頭ぐしかみ村に接する。南は太平洋、西は東シナ海に面し、慶良間けらま海峡を挟んで慶良間列島を望む。市域は南北九・二六キロ、東西九・九七キロ。地形は市域の東部に位置する島尻地方の最高峰である与座よざ(一六八・四メートル)から断層が縦横に走り、北側が断層崖、南側が緩やかな斜面をもつ幾筋かの丘陵を形成している。地質は島尻層群を基盤岩とし、その上を琉球石灰岩が覆っている。島尻層群からなる地域は保水力のある灰色のジャーガル土壌で、琉球石灰岩からなる地域は保水力の乏しい赤色の島尻マージ土壌である。市域の北部はジャーガル地帯で、南部にかけて島尻マージが多くなる。喜屋武きやんから摩文仁まぶににかけては耕地のほとんどが島尻マージである。西側の海岸線や埋立地はカニクとよばれる砂地、米須こめす大度おおどの海岸には砂丘がある。唯一の河川である報得むくえ(延長一〇・七キロの二級河川。近世にはムクイリとよばれた)が中央を西に流れる。糸満いとまん兼城かねぐすくの境界で東シナ海に注いでいたが、埋立により河口が豊見城市との境界まで延長された。旧河口は漁場としての条件に恵まれて古くから漁業が営まれ、糸満いちまん浦とよばれた。西海岸には岡波おかは伊保いほ沖之おきの島・奥武おー・エージナの五つの小島が浮んでいたが、奥武は古くに地続きとなり、伊保・沖之島は周囲を埋立てられている。国道三三一号が那覇市から豊見城市を南下し、当市を経て具志頭村へ東進するほか、主要地方道糸満―与那原よなばる(七七号線)・同那覇―糸満線(八二号線)・同奥武山おうのやま―米須線(七号線)などが通る。

〔原始―近世〕

市域には貝塚時代の遺跡として前期の兼城かねぐすく貝塚、後期の真栄里まえざと貝塚・米須貝塚などがある。古琉球では南山なんざん城跡をはじめ三八ヵ所のグスクが確認されている。「おもろさうし」によれば「くめすよのぬし」(巻二〇の一)や「いしやらよのぬし」(巻二〇の二)・「やまきたらすさへ」(巻二〇の七)・「やまくすくたゝみきよ」(巻二〇の一八)・「ふくしおわる(中略)せのぬし」(巻二〇の一五)・「まかひおわる(中略)よのぬし」(巻二〇の二四)・「あはこんの大や」(巻一三の一二八)などといった有力者たちが各地にグスクを築いて群雄割拠していた。なかでも「しもの世のぬし」(巻八の六)は最も有力な支配者であったようである。大里おおざとにある南山城には、大里按司をはじめとする承察度・汪応祖・他魯毎と続いた南山王統がおり、その支配は「しもしましり」とよばれた兼城かにぐすく大里うーざとう真壁まかびの範囲からしだいに豊見城とうみぐすく喜屋武ちやん摩文仁まぶい東風平くちんだ具志頭ぐしちやん島添大里しましーうーざとう玉城たまぐすく知念ちにん佐敷さしちにまで及んだ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「糸満市」の意味・わかりやすい解説

糸満〔市〕
いとまん

沖縄県沖縄島南西端にある市。1961年糸満町と兼城村,高嶺村,三和村の 3村が合体し,1971年市制。市名は近世以来の村名による。北に急傾斜,南に緩傾斜するケスタ状の地形が発達し,集落は南傾斜地に立地。第2次世界大戦前,糸満漁民は小舟で行なう独特の「追い込み漁法」により,西太平洋から東南アジアまでの広い範囲に出漁,活躍した。その頃からの伝統で,旧暦の 5月4日には,豊漁と安全を海神に祈願する爬竜船競漕(ハーレー)が行なわれている。中心地区の旧糸満町は漁村から発展した町。農村部ではサトウキビ,花卉,野菜を栽培するが,近年は特に養豚が盛ん。南部一帯は第2次世界大戦最後の激戦地で,戦後 1946年には人口減少のため村を形成できなくなった真壁,摩文仁(まぶに),喜屋武(きゃん)の 3村が合併して三和村を発足した。戦跡が多く,摩文仁丘(まぶにがおか)には各都道府県の慰霊塔が林立する平和祈念公園があり,1995年に記念碑「平和の礎(いしじ)」が除幕された。市域の南半分は沖縄戦跡国定公園に属する。南東部に国の史跡具志川城跡がある。那覇市にいたる国道331号線が通る。面積 46.63km2。人口 6万1007(2020)。

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