普及版 字通 「糸(漢字)」の読み・字形・画数・意味
糸
常用漢字 6画
(旧字)絲
12画
[字訓] きいと・いと
[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[字形] 会意
旧字は絲に作り、二糸(べき)に従う。糸は糸たばの形。〔説文〕十三上に「(かひこ)の吐くなり」とあり、生糸をいう。卜文に、桑の葉の上に蚕をかくものがあり、また「示(さんじ)」としてその神を祀ることが行われた。〔礼記、祭義〕に、王后の親蚕、また蚕室の儀礼のことなどがしるされている。神衣はその糸で作られ、祭服を「絲衣」という。金文に絲を「絲(こ)の」の義に用いるものがあり、と声近く通用したのであろう。
[訓義]
1. いと、きいと、きぬいと。
2. つむぐ、いとつむぐ。
3. 小数の名、十忽を糸という。糸は一万分の一。
[古辞書の訓]
〔和名抄〕絲 伊度(いと)/絲鞋 辨色立に云ふ、伊止乃久(いとのくづ)、今案ずるに、俗に云ふ、之賀伊(しかい) 〔名義抄〕絲 イト・ヨル・ヲ・クミ・ツク・ツラヌ
[声系]
〔説文〕にを絲の省声の字とし、(じ)声の字六字を収める。を〔説文〕に艸木滋益の義とするが、卜文・金文の字形は二幺(よう)(糸たば)を並べた形。(滋)は、これを水にひたす意の字である。
[語系]
絲si、・・tziは声義近く、以下は、水にひたし、染色することなどから、その字義をえている。
[熟語]
糸鞋▶・糸衣▶・糸雨▶・糸▶・糸▶・糸竿▶・糸嵌▶・糸▶・糸管▶・糸金▶・糸▶・糸▶・糸牽▶・糸繭▶・糸言▶・糸弦▶・糸光▶・糸簧▶・糸▶・糸▶・糸毫▶・糸忽▶・糸子▶・糸糸▶・糸▶・糸事▶・糸紗▶・糸▶・糸緒▶・糸絮▶・糸縄▶・糸条▶・糸人▶・糸税▶・糸線▶・糸組▶・糸竹▶・糸桐▶・糸絛▶・糸髪▶・糸微▶・糸布▶・糸▶・糸茅▶・糸木▶・糸麻▶・糸綿▶・糸網▶・糸羅▶・糸▶・糸絡▶・糸履▶・糸▶・糸柳▶・糸綸▶・糸縷▶・糸涙▶
[下接語]
哀糸・一糸・雨糸・烏糸・金糸・銀糸・糸・絹糸・繭糸・紅糸・蚕糸・朱糸・秋糸・縄糸・垂糸・寸糸・青糸・製糸・素糸・治糸・蛛糸・抽糸・糸・鬢糸・鞭糸・麻糸・鳴糸・綿糸・網糸・遊糸・履糸・柳糸・連糸・練糸
糸
6画
[字訓] いと・かすか
[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[字形] 象形
糸たばの形。〔説文〕十三上に「細き絲なり。束絲の形に象る」とあり、糸をより合わせたものが絲(し)。いま糸を絲の字に用いるが、もと別の字である。糸たばを拗(ね)じたものを幼という。幼は糸に木を通して拗じる形。糸を練り、染めるとき、汁をしぼるのに勒してしぼった。幺(よう)の下辺に、左右にたれる形が糸である。〔伝〕に「一の吐くを忽(こつ)と爲す。十忽を絲と爲す。糸は五忽なり」とあって、絲の半分を糸という。
[訓義]
1. いと、ほそいいと、いとすじ。
2. かすか、すくない、わずか、こまか。
3. つらなる、細くつらなる。
4. 微量の単位。
5. いま絲の字に糸を用いる。
[古辞書の訓]
〔新字鏡〕糸 の口より吐ける細き糸なり 〔名義抄〕糸 細絲なり。ツク・ツラヌ 〔字鏡集〕糸 ツク・イト・ヨル・タル・イツル・ツラヌ・ヨリイト
[部首]
〔説文〕に(繭)・繹・(緒)・純・經(経)・(緯)・・縊・彝など二百四十七字と〔新附〕九字。〔玉〕糸部は顧野王原本の書写本がわが国に残されていて、「そ三百九十二字」とあり、〔沢古堂本〕のいわゆる宋本と収録字に異同がある。彝(い)を〔説文〕〔玉〕はいずれも糸に従う形としてこの部に録入しているが、卜文・金文の字形は鳥を羽交い締めにしている象形字。その吐く血を以て清めの(きん)礼を行った。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報