糖原病(グリコーゲン病)

内科学 第10版 の解説

糖原病(グリコーゲン病)(糖代謝異常)

定義・概念
 糖原病グリコーゲン病)は,glycogen storage disease(グリコーゲン蓄積病)ともよばれる.グリコーゲン(糖原)代謝に関与する酵素の遺伝的欠損により,肝臓や筋などにグリコーゲンが病的に蓄積してその臓器障害を引き起こすとともに,病型により低血糖を呈する疾患である.【⇨15-21-10)】
分類
 糖原病には責任遺伝子を異にする多くの病型が存在する(図13-2-36).主要な罹患臓器が肝であるⅠ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅵ,Ⅷ型を肝型糖原病,筋症状が特徴的なV,Ⅶ型を筋型糖原病,Ⅱ型を混合型と分類することができるが,必ずしも絶対的な分類ではない.
疫学
 累積発生頻度は,およそ数万人に1人と推定される.Ⅲ型が最も多く,ついでⅠ型およびⅡ型が多いと考えられている.
病理
 罹患臓器にグリコーゲンの蓄積が認められる.グリコーゲンはPAS陽性でジアスターゼによって消化される.ただし,Ⅳ型では異常構造のグリコーゲンが蓄積するため,PAS陽性ではあるがジアスターゼで消化されない.Ⅱ型ではライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積し,末梢血リンパ球内の空胞として認められる.
遺伝形式
 Ⅷ型のある一群(X染色体性)を例外として,そのほかの糖原病はすべて常染色体劣性遺伝形式をとる.[松原洋一]
■文献
Kishnani PS, Koeberl D, et al: Glycogen storage diseases. In: The Online Metabolic and molecular Bases of Inherited Disease, (Valle D, Beaudet AL, et al eds). http://www.ommbid.com/OMMBID/the_online_metabolic_and_molecular_bases_of_inherited_disease/b/abstract/part7/ch71

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

家庭医学館 の解説

とうげんびょうぐりこーげんびょう【糖原病(グリコーゲン病) Glycogenosis】

[どんな病気か]
 嫌気性解糖系(けんきせいかいとうけい)(コラム「筋肉エネルギー代謝のしくみ」)を担っている酵素(こうそ)が、不足するか欠損するために、分解されるべきグリコーゲン(糖原)が蓄積されて、筋肉がおかされる病気です。
 現在、欠損酵素によりⅠ~Ⅷ型に分類された10の病型が見つかっています。一般に常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたいれっせいいでん)します。
 Ⅰ型(フォン・ギールケ病)のように、直接には筋肉をおかさない病型もあります。しかし、2つしかないATP(アデノシン三リン酸)産生系の一方が障害されれば、ATPを大量に消費する筋肉に障害がおこらないはずはありません。
 Ⅱ型(ポンペ病)は、筋ジストロフィーとの区別が問題となります。筋肉だけではなく、肝臓や心筋にも障害をともなう重症の疾患です。成人では呼吸不全となることが多いものです。
 Ⅲ・Ⅳ型はまれな疾患で、心筋障害をともないます。
 Ⅴ型(マッカードル病)は、ホスホリラーゼが欠損します。若年から発症し、運動時に筋肉の痛みをともなうけいれんミオグロビン尿(にょう)(急激に筋肉が壊れて、尿がビール瓶(びん)のような色になる)がみられます。
 Ⅵ型は直接に筋肉は障害されません。
 Ⅶ型(垂井病(たるいびょう))は、筋肉のホスホフルクトキナーゼが欠損します。発作性ミオグロビン尿がみられます。
[治療]
 阻血下運動負荷試験(そけつかうんどうふかしけん)(酸素がない状態で運動を行ない、乳酸(にゅうさん)が生成できるかをみる)を行ないます。糖原病であれば、乳酸の生成がみられません。筋や白血球(はっけっきゅう)などで生化学的に欠損酵素を判定します。
 治療は食事療法程度で、根本的な治療法はありません。

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