精子銀行(読み)せいしぎんこう

百科事典マイペディア 「精子銀行」の意味・わかりやすい解説

精子銀行【せいしぎんこう】

多くの男性から精子の提供を受けて冷凍保存しておき,精子を必要とする女性に体外受精をする会社のこと。不妊治療のほか,シングル・マザーレズビアンカップルなどライフスタイルの多様化によって,米国ではビジネスとして定着している。 女性はドナー(精子提供者)となった男性の容姿学歴,趣味,特技などを細かく選択することができる。最近では,インターネット上でドナーのデータを手軽にチェックできるようになり,日本やヨーロッパなどからも精子の注文が増えている。 精子銀行への登録料は50〜200ドル程度,体外受精は1回7000〜1万ドルで,1回あたりの成功率は30%ほど。 米国では精子銀行に関する法的な規制はないが,1988年に食品医薬品局FDA)は,精子採取時および採取後6ヵ月以上経過したときの2回HIV検査を行い,結果が陰性であれば登録するように勧告している。また,米国受精協会The American Fertility Society,米国組織バンク協会The American Association of Tissue Banksなどの団体では独自の基準を設けており,精子銀行によってはさらに厳しい独自の基準でドナーを選んでいる。 たとえば,精子銀行大手のパシフィック・リプロダクティブ・システム社(サンフランシスコ)では精子,血液,尿の検査結果が正常で,HIVほか,梅毒淋病B型肝炎C型肝炎などの病原体がない,といった個人データのほか,家族全員の病歴を4世代にわたって調べている。また,年齢21〜35歳,高校卒以上(大学卒が望ましい)といった条件も設けている。 なお,生まれてきた子どもが自分の出生を知る権利を守るために,大人になったときに子どものほうからドナーに連絡をとれるシステムを設ける業者も出てきた。ただし,ドナーからは自分の精子を提供した女性やカップルについて知ることはできず,自分から子どもに連絡をとることもできない。→卵子銀行
→関連項目遺伝子銀行AID

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

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