粉塵爆発(読み)フンジンバクハツ(英語表記)dust explosion

デジタル大辞泉 「粉塵爆発」の意味・読み・例文・類語

ふんじん‐ばくはつ〔フンヂン‐〕【粉×塵爆発】

空気中に浮遊する石炭微粒子小麦粉・砂糖・プラスチック粉などが火花閃光せんこうなどによって引火し、爆発すること。粉体爆発

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精選版 日本国語大辞典 「粉塵爆発」の意味・読み・例文・類語

ふんじん‐ばくはつ フンヂン‥【粉塵爆発】

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改訂新版 世界大百科事典 「粉塵爆発」の意味・わかりやすい解説

粉塵爆発 (ふんじんばくはつ)
dust explosion

砂糖,小麦粉,おがくず粉,米粉,デンプンその他の可燃性の微細粉塵が,塵雲となって飛揚し,火源に接すると爆発を起こす現象。石炭の微粉も同様に激しく爆発を起こすが,この場合は炭塵爆発ともいう。以下この石炭の粉塵爆発について述べる。一般に採炭作業場の排気側の坑道には,かなりの炭塵が通気によって運ばれて浮遊し,徐々に堆積している。この炭塵をこのまま放置すると,ガス爆発の爆炎や坑内火災その他の原因によって引火爆発を起こす危険性がある。一般に炭塵は,微細な粒子ではあるが固体ないし粉体であるため,ガスの引火爆発に比べて相当強力な熱エネルギーにあわないかぎり,引火の危険性は少ない。また,炭質の相違によって引火点にも上下がある。一般的には,揮発分の高い石炭(日本では揮発分11%を超える炭層から発生する炭塵を爆発性炭塵といっている),水分と灰分の少ない石炭,粒度の細かい石炭ほど炭塵爆発の危険性が大きい。炭塵爆発は,静止した堆積炭塵に引火爆発する場合は少なく,普通は炭塵が適当な濃度で空気中に浮遊し炭塵雲が形成されているところに引火する。炭塵雲中の石炭の粒子は火炎に接して加熱,乾留され,一部メタンその他の炭化水素ガス,水素,一酸化炭素等のガスを発生するが,これらは空気と混合して爆発性を帯び,火炎によって着火爆発する。ついで,これらのガスが発散した残りのコークス分が固体のままで燃焼する。炭塵雲の濃度が適当な場合は,以上の燃焼熱は付近の炭塵粒に作用してガスを発生させて同様に燃焼爆発を起こす。堆積炭塵の吹上げによる炭塵雲の形成,爆発が繰り返され,これが遠方まで波及する。炭塵爆発は以上のような機構で起こるが,炭鉱坑内の気流中にはメタンガスが多少なりとも存在することが多く,その場合には炭塵雲中の爆発濃度限界は拡大する。

このような災害を防止するには,炭塵の発生を防止すること,発生した炭塵を沈降させて掃除・除去すること,炭塵の爆発性を失わせること,爆発の火源をなくすること,爆発を局部で防止することが必要である。炭塵発生防止の方法として炭壁注水法がある。炭壁に適当な間隔で穿孔(せんこう)したところに注水器を挿入して圧力水を注入し,炭層内の細い亀裂を通して水を浸透させ,炭層全体を湿潤させるものである。浸透力を増加させるために注水の中に少量の界面活性剤を添加する場合もある。炭塵発生の防止,浮遊炭塵の沈降,爆発性の抑制法としては散水法がある。散水によって堆積炭塵をぬらすためにはおおよそ30%の水分を保有させる必要がある。炭塵はぬれにくい性質があるので一時的におさえるには有効であるが,爆発の火炎が通過するとたちまち蒸発乾燥する可能性もある。他の爆発性抑制法には岩粉散布法があり,これは最も効果のあるものとされている。不燃性の岩石粉末を堆積炭塵の上に散布して,理想的にいえば両者を混合してしまうので,たとえ爆炎が通過しても岩粉が熱を吸収してしまう。したがって使用する岩粉としては,比熱が高くて比重が小さく粒度の細かいもの,吸湿性が少なく固結しにくいもの,遊離ケイ酸分の少ないものが要求される。また,なるべく白色安価,大量に入手可能なものが求められるため,一般的には石灰石の粉末が使用されている。爆発を局部で防止する方法には岩粉棚法,水棚法がある。前者は,爆発の際その圧風によって坑道に設置しておいた岩粉積載の棚が転覆し,飛散した岩粉が濃厚な岩粉雲をつくって後から来る爆炎を阻止する方法である。水棚法は水をプラスチック製の水槽または袋に入れて棚上に並べるか天井からつり下げ,これが爆風により転覆するか袋が破られて坑道全断面に水幕をつくり爆炎を阻止するものである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「粉塵爆発」の意味・わかりやすい解説

粉塵爆発
ふんじんばくはつ
dust explosion

空気中に浮遊する粉塵が、ある条件(濃度など)によっては、火花、閃光(せんこう)などの火源からエネルギーを与えられると、熱と圧力を発生しながら急激に爆発することをいう。粉体爆発ともいう。石炭微粒子による炭塵爆発がよく知られているが、このほかにも小麦粉、砂糖、プラスチック粉、有機物の微粉末、金属粉末、洗剤などきわめて広範囲のものが粉塵爆発をおこす。

[山崎 昶]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「粉塵爆発」の意味・わかりやすい解説

粉塵爆発
ふんじんばくはつ
dust explosion

粉体爆発ともいう。可燃性物質の微粒子が空気中に飛散しているとき,火花などの点火源が与えられて生じる激しい爆発。炭坑の炭塵爆発は最も有名であるが,砂糖,小麦,大豆,茶,芥子 (けし) ,皮革,プラスチック,ケイ素,マグネシウム,鉄,アルミニウムなどの粉体まで非常に多くの物質で起る。粒子の大きさは 1~100μm ,濃度限界は空気湿度,点火条件,粒子径などで一定でないが,下限界は空気 1l あたり,砂糖,小麦は 10-3g ,硫黄,アルミニウムは 7×10-3g ,上限界は砂糖で 13.5g といわれる。気体爆発に比べ炎の伝搬速度は小さいが,気体発生量が多いため,最大圧力が高く破壊力も大きい。粉塵爆発の防止法は種々考案されており,炭塵爆発予防には石粉を坑内にまく。石粉が石炭粉に付着すると熱容量が大となり,発火温度に達しないからである。発火温度は 400~700℃である。

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百科事典マイペディア 「粉塵爆発」の意味・わかりやすい解説

粉塵爆発【ふんじんばくはつ】

可燃性物質の固体粉末が空気中に浮遊しているとき,一定温度以上に熱せられるか,火炎,電気火花などで点火されると燃え,条件によっては激しい爆発を起こす。これを粉塵爆発という。一般に粒度が細かくて浮遊性が大,空気と反応しやすく,燃焼熱が大きい場合に起こりやすい。爆発しやすいものとしては,酢酸セルロース,尿素,砂糖,デンプン,小麦粉,木粉,コーヒー,石炭,タバコなど多くの有機物の微粉末,マグネシウム,アルミニウム,還元鉄などの金属粉など多くのものが知られている。石炭の微粉も同じように激しい爆発を起こすが,この場合は炭塵爆発ということが多い。
→関連項目爆発

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