篠島(読み)しのじま

日本歴史地名大系 「篠島」の解説

篠島
しのじま

[現在地名]南知多町篠島

師崎もろざきの南東海上一里にある島で、周辺に属島として島・小磯こいそ大磯おおいそ築見つくみ(鶫島)中手なかて島・島・まつ島・戸亀とがめ島・ひら島の九島がある。「万葉集」巻七に

<資料は省略されています>

とある小竹しの島は篠島に比定され、塩味しおみの丘に歌碑がある。

平城宮跡出土の木簡に「参河国幡豆郡篠嶋海部供奉正月料御贄参籠ニ別六斤」、同じく「参河国幡豆郡篠嶋海部供奉七月料御贄参籠並佐米」や「参河国幡豆郡篠嶋海部供奉五月料御贄佐米楚割□斤」など計六枚が発見された。これによると三河国幡豆はず郡に属し、佐米(鮫)や楚割などの海産物を貢納していた。八王子社社記によれば伊勢神宮御幣鯛おんべだいを奉献し、建久年中(一一九〇―九九)神宮の神主が編した皇太神宮年中行事(神宮文庫蔵)に干鯛四二尾を奉献したとある。明治までは御幣鯛三六〇尾、現在は五〇八尾を奉献する(南知多町誌)

延元三年(一三三八)九月、南朝の義良親王(後村上天皇)一行は兵船五〇〇艘を率いて東国に向かったが、難破して船は各所に漂着(太平記)。「新葉集」巻九に載る前大僧正頼意の歌の詞書によれば、このとき親王の船は「伊勢の国篠島といふ所」に漂着、伝えによれば約六ヵ月間島にとどまり吉野に帰還した。この時村民は篠島城を修理して宮の住居とした。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「篠島」の意味・わかりやすい解説

篠島
しのじま

愛知県知多半島の南端、知多郡南知多町の師崎(もろざき)港から海上3キロメートルにある島。面積0.93平方キロメートル。かつて篠島村として独立していたが、1961年(昭和36)南知多町の一部となった。全島が領家帯花崗(かこう)岩で、最高点48メートル。属島9のうち小磯(こいそ)、中手(なかて)の両島は埋立によって篠島と陸続きになった。1962年に愛知用水から海底水道によって上水の供給を受け、従来の乏水性から解放された。島は水田皆無で漁業一本で生活していたが、上水供給によって観光化が可能になった。古くから伊勢(いせ)、渥美(あつみ)を結ぶ海上交通の要地、篠島港は風待ち港であった。1338年(延元3・暦応1)義良(のりよし)親王(のちの後村上天皇)が暴風のため6か月滞在「帝(みかど)の井」を掘ったという古話もあり、坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)、源頼朝(よりとも)、西行(さいぎょう)、徳川家康加藤清正らゆかりの史跡も多い。伊勢神宮領であったことから毎年御幣鯛(おんべだい)奉納の儀もある。篠島祭は旧正月3、4日、神戸(ごうど)の神明(しんめい)社に堂山の八王子社の神が渡る祭りで、古式を伝承した舞と「垢離(こり)とり」の神事が行われている。三河湾国定公園に含まれ、師崎港河和港伊良湖港などから船がある。人口1890(2009)。

[伊藤郷平]

『『愛知の離島』(1982・愛知県)』

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改訂新版 世界大百科事典 「篠島」の意味・わかりやすい解説

篠島 (しのじま)

愛知県知多半島の南端,師崎(もろざき)の南東約3kmの海上に浮かぶ花コウ岩質の島で,知多郡南知多町に属する。面積0.66km2。近くに散在する日間賀島などとともに,〈東海の松島〉ともいわれ,三河湾国定公園に含まれる。居住の歴史は古く,弥生~古墳時代の遺跡もみられ,古代は三河国,中世には伊勢国に属し,近世になって尾張国に入った。島民の多くは沿岸・近海漁業を営み,補助的に零細な畑作農業をしている。1962年に愛知用水が海底パイプで給水され飲料水源となった。
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百科事典マイペディア 「篠島」の意味・わかりやすい解説

篠島【しのじま】

愛知県知多郡南知多町師崎(もろざき)の沖約4kmにある島。面積0.86km2。花コウ岩からなる。耕地は少なく,タイ,タコなどの漁業が盛ん。平城宮跡出土木簡により,海産物を納めていたことが分かる。古くは伊勢神宮領で,江戸初期,島民は徳川家康から紀伊,志摩,伊勢,尾張,三河,遠江(とおとうみ),駿河の7ヵ国の漁業権を得ていた。三河湾国定公園に含まれ,海水浴,釣によい。付近の木島に外国猿苑がある。
→関連項目南知多[町]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「篠島」の意味・わかりやすい解説

篠島
しのじま

愛知県南部,三河湾口の島。1島1村であったが,1961年南知多町の一部となる。 73年にレジャーセンター用地が埋立て造成された。三河湾国定公園に属する観光地。また伊勢神宮に御幣鯛を毎年供するなど古くから伊勢との関係が深く,村上天皇,坂上田村麻呂,源頼朝,西行法師,徳川家康,加藤清正らゆかりの史跡や,篠島温泉がある。河和,師崎,蒲郡各港から定期船が就航。面積 0.92km2。人口 2039 (2000) 。

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デジタル大辞泉プラス 「篠島」の解説

篠島

愛知県知多郡南知多町、三河湾に浮かぶ島。三河湾国定公園に属し、佐久島、日間賀島とあわせ「愛知三島」と呼ばれる。面積約0.94平方メートル。シラス漁や海苔、ワカメの養殖などの漁業、水産加工業が盛ん。伊勢神宮に奉納する「おんべ鯛」で知られ、「清正の枕石」などの見どころがある。

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