管子(読み)かんし

精選版 日本国語大辞典 「管子」の意味・読み・例文・類語

かん‐し クヮン‥【管子】

[一] 「かんちゅう(管仲)」の敬称。
[二] 中国、古代の政治論の書。原本は八六篇あったが、七六篇が現存。二四巻。春秋時代、斉の名政治家、管仲の著とされるが、実際戦国時代末から漢代にかけて、何人もの論文をまとめたもの。政治、経済、軍事、教育、陰陽地理の諸問題を論じ、一応法家に分類されるが、雑多な思想がうかがわれる。

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デジタル大辞泉 「管子」の意味・読み・例文・類語

かん‐し〔クワン‐〕【管子】

管仲かんちゅうの敬称。
中国古代の政治論集。管仲の著とされるが、成立戦国時代法家道家儒家思想をまじえた政治・経済・倫理を述べたもの。86編のうち、76編が現存。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「管子」の意味・わかりやすい解説

管子
かんし

中国春秋時代の斉(せい)の名宰相管仲(かんちゅう)の名に仮託された、戦国時代から漢代までの諸傾向の著作を含む思想書。『漢書(かんじょ)』芸文志(げいもんし)では道家に著録されるが、『隋書(ずいしょ)』経籍志以後は法家の書とされる。もと86篇(へん)あったが現存は76篇。大きくは〈経言〉〈外言〉〈内言〉〈短語〉〈区言〉〈雑篇〉〈管子解〉〈軽重〉の8種類に類別されているが、内容的には類ごとの統一はなく、法家、道家、陰陽家、兵家、儒家、雑家など各学派の思想がみられ、また法理論を究明する法法・明法篇、経済を論ずる軽重の諸篇、陰陽を説く宙合・侈靡(しび)・制分篇、地理を説く地員篇、礼を説く弟子職篇、医学を説く水地篇、政治を説く牧民・形勢・正世・治国篇など、種々の分野にわたる。現代中国では、斉の稷下(しょくか)の学士の著作の総集だという説もある。なお心術上下、白心・内業の4篇は道家的色彩が強く、戦国時代中期の道家思想家宋(そうけい)、尹文(いんぶん)の遺著だともいわれる。諸篇の成立の時期も、戦国時代中期から前漢の昭帝期ごろまで、長期にわたるものが含まれる。

[澤田多喜男]

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改訂新版 世界大百科事典 「管子」の意味・わかりやすい解説

管子 (かんし)
guǎn zi

東アジアのダブル・リード気鳴楽器。中国南北朝時代に亀茲楽(きじがく)と共に西域から中国へ伝来したと言われ,当時はこれを篳篥,觱篥,悲篥などと称した。初めは竹製または木製の9孔(前7後2)であったが,後には8孔(前7後1)となった。隋・唐の宮廷宴饗楽において主旋律を奏するのに用いられ,宋代には独奏楽器としても用いられるようになった。その音量の豊かなことから,室外演奏に適しており,戯曲音楽の伴奏にも使われている。音高や管の長さによって大管,中管,小管,双管の別がある。広東音楽や粤劇(えつげき)伴奏に用いる喉管は,管子から派生し作られた楽器。朝鮮の雅楽,唐楽等で用いるピリ,日本の雅楽の篳篥(ひちりき)は管子と同系統の楽器。
執筆者:

管子 (かんし)
Guǎn zǐ

中国の書名。全86編,うち現存するもの76編。春秋時代の斉国の名宰相管仲の名を書名に冠するが,実際は戦国時代から漢初にかけて管仲の学説に擬して伝承されてきた数群の資料を,漢代(前202-後220)初期に集成したものであろう。法家的傾向を最も強く有するが,儒家・道家など諸子の学説をも交え,断片的記述の集成になる編が多い。特に〈軽重篇〉は漢初の経済財政資料として重要である。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「管子」の意味・わかりやすい解説

管子【かんし】

中国のオーボエ属の管楽器。中国語ではグアンズ。西域のクチャから渡来した楽器。6世紀後半には篳篥(ビーリー)の名で宮廷合奏に用いられていた。朝鮮半島のピリや日本の篳篥(ひちりき)と同系。現代のものは,前面に指孔7,背面に親指孔1の,短い木管あるいは竹管に大きな2枚のリードを差し込む。20世紀になってからは主として地方劇,寺院の音楽,民俗音楽などにその他の楽器とともに用いられる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「管子」の意味・わかりやすい解説

管子
かんし
Guan-zi

中国,春秋時代の斉の宰相管仲 (かんちゅう) の著と伝えられる書。 76編。先秦から秦,漢時代にかけての政治,経済,文化などが儒家,道家,法家,陰陽家など多くの思想的立場で記述されており,実は,漢代までの間に多くの人の手によって記述編纂された書。

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旺文社世界史事典 三訂版 「管子」の解説

管子
かんし

春秋時代の斉 (せい) の管仲の著といわれる書物
現在残っている本は24巻76(もとは86)編に分かれているが,実際は戦国のころ加筆された部分が多い。農民を富ませ,その上に君権を強化せよと説く。

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世界大百科事典(旧版)内の管子の言及

【篳篥∥觱篥】より

…また,古くは笳管(かかん),管,賀管ともいった。
[中国]
 現代の中国では,管あるいは管子と呼ばれるものを使用しており,篳篥は古楽器とされる。篳篥は南北朝に西域の胡(こ)の楽器として伝えられ,隋,唐の時代には主要旋律を奏する楽器として宮廷の音楽に用いられ,宋代には宮廷や新しく発展しはじめた劇楽でも,ますます重要な楽器とされた。…

【管仲】より

…桓公が春秋時代最初の覇者となることができたのは,じつに管仲の力によるものであった。彼の著作と伝えられる《管子》24巻は,もちろん彼1人一時の作ではなく,おそらく戦国から漢代にかけて斉地方の重商主義を主張する学派の人びとが彼に仮託してまとめあげたものと考えられる。【永田 英正】。…

※「管子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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