競争(社会心理学)(読み)きょうそう(英語表記)competition

翻訳|competition

日本大百科全書(ニッポニカ) 「競争(社会心理学)」の意味・わかりやすい解説

競争(社会心理学)
きょうそう
competition

社会心理学用話。2人またはそれ以上の人々からなる集団が、共通の目標の達成を目ざして行動する場合、基本的な対人相互作用あるいは社会的交渉形式として、競争と協力(協同)があげられる。競争は、互いに他をしのぎ自分の立場を有利にしたり、共通の目標に一歩先んじて到達しようとしたりする行動で、人々の間の相互妨害的な関係である。相手を打ち倒すことを目的とする闘争葛藤(かっとう)とは区別されるが、エスカレートして闘争や葛藤に転化することもありうる。他方において、互いに助け合って共通の目標の達成に向かって努力する相互援助的な関係が、協力ないし協同であるが、現実の社会生活では競争と協同が並行して行われることも少なくない。同じ職場に働く作業者たちが、互いに日々の生産高を競争しながら、職場全体の能率向上に協力するような場合である。個人の仕事や学業成績を向上させる手段として、日常しばしば競争心に訴える方法がとられるが、仕事や学業の種類やその人の性格によっては、かならずしも有効とはいえない。競争では、人々が共通の目標を中心としてまとまりや連帯感をもちにくく、全体としてはかえって能率や成績が低下してしまうこともおこる。

[辻 正三]

 生物学では、いくつかの生物が、食物、水分、養分、光、生活空間など生活に必要な資源をめぐって競い合うことをいう。同種間でおこる種内競争と、異種間でおこる種間競争とに分けられる。食物その他の生活要求の類似した種は、激しい競争の結果、同じ場所に共存できないという考えがある。この説を競争的排除則という。植物の種内競争では、競争に弱い個体がしだいに枯死していく競(せ)り合い型競争と、資源の奪い合いの結果、集団全体の個体が小さくなる共倒れ型競争の二つのタイプがある。植物の種間競争は、植物群落の構成種の交代(植生遷移)に大きな役割を果たしている。ある種の植物の葉や根からは、他の植物の発芽生育を抑制する化学物質(他感作用物質)が排出され、種間あるいは種内競争に影響を与えている。同種間あるいは近縁種間の競争は、その環境によく適応した個体の子孫を残すことになるので、進化の要因としても重要である。

[岩城英夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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