竜退治(読み)りゅうたいじ

改訂新版 世界大百科事典 「竜退治」の意味・わかりやすい解説

竜退治 (りゅうたいじ)

世界的に分布が広く,古く,日本の〈猿神退治〉の源流と考えられる物語。若者が名刀と犬を手に入れる。一定間隔で犠牲を要求する多頭の竜(水の精,巨人)への犠牲として,ある王女がささげられることを知り,犬の助けを得て竜退治を試みる。竜が現れると,犬の援助を得て退治し,その舌を証拠として切り取る。ライバルが現れ,自分が竜を退治したと称して王女と結婚することになるが,ちょうどそのとき真の救助者である若者が,王女に犬を使者として送って自分の存在を知らせる。次に自ら舌を持って参上して,真実を暴露し,王女と結婚する。

 この話はアイルランドから日本までの広い地域に多様な変種をもって伝えられているが,古くオリエントに生まれた物語と考えられている。宝を守る竜との戦いのモティーフは,6世紀にはすでに西欧に知られていた。水にすむ神への一定間隔の犠牲という観念は,水を不可欠とする農耕民族の文化の中で生まれたものと考えられる。日本神話の〈八岐大蛇(やまたのおろち)〉,昔話の〈猿神退治〉は,この話の世界的分布の一環である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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