立柱(読み)たてばしら

精選版 日本国語大辞典 「立柱」の意味・読み・例文・類語

たて‐ばしら【立柱】

〘名〙
家屋を新築する時、いちばん最初に立てる、家屋の中心となる柱。たてそめばしら。
言継卿記‐永祿七年(1564)八月二一日「今日松尾社務嫡男宮内大輔家造立、立柱上棟云々」
② 起倒式の帆柱を装備する和船が、帆柱を立てた状態。また、その立てた帆柱。
※一葉丸福州漂流記(1782)「益々風強く吹候に付、立柱にては船ゆり砕き申す可くと存じ」
漁村などで、夫の留守中に密通していた妻が、相手の男へ夫の在宅を示すために、戸口などに櫂(かい)などを立てて知らせたこと。
談義本・風流志道軒伝(1763)三「加太の立柱、色の湊多き中にも、出口の柳こきまぜし」

りっ‐ちゅう【立柱】

〘名〙 家屋を建築する時、初めて柱を立てること。また、その祝の儀式。はしらだて。
蔭凉軒日録‐永享七年(1435)七月二二日「当時僧堂立柱」

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改訂新版 世界大百科事典 「立柱」の意味・わかりやすい解説

立柱 (りっちゅう)

家屋の新築にはじめて柱を立て,その日を造作の事始めとして祝うことをいう。伊勢神宮では神殿造営のはじめ中央に立てる忌柱(いむばしら)または心御柱(しんのみはしら)の御柱立の行事がある。まず吉日を選んで山口祭をし,心の柱を造る吉日を卜して内人(うちんど)たちが杣入し,木本祭(このもとまつり)を行い忌柱を造って杣より敷地に運び出す。ここでまた吉日を選んで地鎮祭を営む。その後草刈り,穴掘りなどをしたうえ,大物忌(おおものいみ)という内人が忌柱を立て,その後に四方の柱が立てられる。民間では家屋建築に際して初めて立てる柱を大黒柱,大極柱あるいは立初柱(たてそめはしら)ともいう。近世の匠家故実によれば立柱の式は四季に応じて次第の順がある。春は南北東西の順,夏は北南西東の順,秋は東西北南の順,冬は西東南北の順に立てる。立柱の際,天星玉女の方に向かい祭壇を設ける。中世では柱立の際に竜伏の意味を加え柱の下面切口に〈頭背腹足〉の4字を四角に記したが,その配置は柱の方角により,また四季によってその位置が異なった。
建築儀礼
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世界大百科事典(旧版)内の立柱の言及

【建築儀礼】より

…古代寺院の造営でも,基礎工事では鎮壇具を地中に埋めて安全を祈り,完成のときには造立供養(ぞうりゆうくよう)が行われた。平安時代以降の建築工事では,礎(いしずえ)(礎石を据えるとき),手斧始(ちようなはじめ)(事始(ことはじめ),木作始(きづくりはじめ)とも呼び,材木加工の開始),立柱(りつちゆう)・柱立(はしらだて)(柱を立てるとき),上棟(じようとう)・棟上(むねあげ)(棟木をのせるとき)が主要な儀式で,日時をあらかじめ陰陽師が卜占し,当日は建築工匠と工事関係者が工事場に集まって儀式を行った。手斧始では工匠が材木に墨糸で墨を打って手斧で削る所作を行い,上棟では棟木上に五色の絹や御幣を飾り,酒を供えた。…

※「立柱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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