デジタル大辞泉
「空」の意味・読み・例文・類語
うつお〔うつほ〕【▽空/▽虚/▽洞】
1 中がからになっていること。また、そのようなもの。うつろ。うろ。
「この唐櫃をこそ心にくく思ひつれども、これも―にて物なかりけり」〈今昔・二九・一二〉
2 岩や樹木にできた空洞。ほら穴。
「いかめしき牝熊、牡熊、子生み連れてすむ―なりけり」〈宇津保・俊蔭〉
3 上着だけで、下に重ねるべき衣類を着用しないこと。
「短き衣―にほうかぶって、帯もせず」〈平家・八〉
4 葱をいう女房詞。
[補説]発音は、古くは「ウツホ」、その後「ウツヲ」「ウツオ」と変化したという。また、「ウツボ」と濁音にも発音されたらしい。
うつせ【▽空/▽虚】
1 貝殻。うつせがい。
「いかなる様にて、いづれの底の―にまじりけむ」〈源・蜻蛉〉
2 中身のないこと。から。空虚。
「手を通さねば便なき袖は―のうちかけ姿」〈浄・聖徳太子〉
むな【▽空/▽虚】
[語素]名詞の上に付いて、何もない、空虚である、の意を表す。「―手」「―言」
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くう【空】
〘名〙
① 天と地の間。そら。空間。虚空(こくう)。
※俳諧・本朝文選(1706)三・賦類・旅賦〈許六〉「天龍の中の瀬は、馬人足を空にまとふ」 〔王維‐送秘書晁監還日本国詩〕
② うつろ。から。空虚。
※猿法語(1761)一心法界といふ弁「死しての後空と成りて何もなき所そと心得て」 〔後漢書‐陳蕃伝〕
③ (形動) 事実でないこと。根拠のないこと。
※今年竹(1919‐27)〈里見弴〉あやめの客「決して自己弁護の空(クウ)な言草ぢゃアない。立派にほんとのことなんだ」
④ (形動) 無益なこと。無意味なこと。むだ。
※隣語大方(18C後)三「惜歳月を空に送らしゃれては生れながら知事が成ませふか」
※
歌舞伎・𢅻雑石尊贐(1823)序幕「惚れた男の名所も聞かず、頼みは目尻の黒子一つ、思へば空
(クウ)な尋ねもの」
⑤ 仏語。天地間の一切の事物はすべて因縁より起こるものであってその実体も自性もないとする考え。二空、三空など、さまざまに数える。空裏(くうり)。
※
往生要集(984‐985)大文一「見
二身実相皆不浄
一、即是観
二於空無我
一」
※平家(13C前)一一「善も悪も空(くう)なりと観ずるが、まさしく仏の御心にあひかなふ事にて候也」
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空 (そら)
sky
気象学的には地上にいる人の目に見える範囲を空とよぶ。
空の形
われわれは空を地平面で区切られた半球だと思っているが,実は押しつぶした丸天井または鏡餅のように,いくらか扁平に知覚しているらしい。人間が地平線から高度45度と思う所を高度計で測ってみると,35度ぐらいしかない。また太陽や月が地平線に近いときには特に大きく見えることから,人は天空を市女笠(いちめがさ)のような形に知覚していると主張する心理学者もある。
空の色
晴天の空は青く見えるのがふつうであるが,これは太陽光が地球の大気に入り,そこにある空気分子に当たって,入射光の方向とはちがう方向に散乱されたものが目に入るときに,青の光が主になるからである。散乱現象は散乱される光の波長と,散乱をおこす粒子の大きさに関係する。散乱現象については有名なレーリーの法則というのがある。これは光の波長に比べて粒子が小さい場合に適用されるもので,散乱光の強さは入射光の波長の4乗に逆比例するのである。太陽光の中には赤から紫までの波長の光が含まれているが,赤の波長は紫の2倍ぐらいはあるから,散乱光の中の波長の長い方,すなわち赤に近い色の光はずっと弱くなる。それで空の色は青く見えるのである。日の出,日没のときの朝焼け,夕焼けの空の色も同じ法則で説明できる。
空気中に汚染物質,塵埃(じんあい),凝結核,微小水滴などが多くなったときの散乱現象についてはミーMieの散乱則(この現象を研究した学者の名前による)がある。それによると,これら粒子の大きさが,光の波長に比べてずっと大きいときは,散乱光の強さは光の波長に無関係になる。霧粒や雲粒の粒子は,光の波長よりずっと大きいから,霧や雲に光が当たると白く見える。また大気中に浮遊する細塵や微水滴なども,その数が多くなると空の青い色は薄くなって白っぽくなる。また粒子の大きさがこれらの間にあるときは,散乱光の強さは波長の0乗から4乗に逆比例するという。0乗は1で,波長に無関係であり,これは今説明したとおりである。4乗は微小粒子の場合で,レーリーの法則で表現されている。
ジェット機で10kmまたはそれ以上の高空を飛ぶときによく経験するが,空は黒ずんだ紫色に見える。これは上記のレーリー散乱を考えればよく理解できる。また1961年に最初の人間衛星が飛んだとき,飛行士が〈地球は青かった〉といったと伝えられているし,また宇宙空間から見た青い地球の写真も撮られている。
空の状態
低気圧などが近づいてくるときには,その前面,中心域,側面,後面で,それぞれ特徴のある雲の分布が見られる。それで雲を観測する場合に,上,中,下層の雲の状態を30種に分けて見るやり方がある。これを〈空の状態〉あるいは〈雲の状態〉という。
執筆者:畠山 久尚
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空【そら】
太陽光線は地表に到達するまでにその一部が空気分子などによって散乱し,短い波長の色光は長いものより散乱する割合が大きい。このため細塵(さいじん)が少なく,晴天の時には空が青く見える。粒子の大きい細塵層を通過すると波長の長い赤まで散乱して,白く見える。日出・日没時には,やはり光の散乱の関係で朝焼け,夕焼けが見られる。宇宙空間では太陽光線を散乱させる空気分子がないので,空は暗黒である。気象観測においては,空に現れている雲の状態を総合的にみてその特徴をとらえ,〈空の状態〉を定義し,これを天気図解析に役だてる。これは上層,中層,下層の状態に大別され,それぞれ10種に細分してある。
空【くう】
仏教の根本概念。原始仏教では瞑想(めいそう)の対象。《般若経》では悟りに達するために,すべての存在を〈空〉と観じ,執着を離れることを内容とする。それは自性空(じしょうくう)と呼ばれ,すべての存在自身固定的存在でないことを意味する。竜樹によれば自性空なるゆえに,存在は縁起による。
→関連項目僧肇|大乗仏教
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空
くう
śūnya; śūnyatā
仏教用語。すべての存在は,直接原因,間接原因によって成立したもので,存在にはその本質となるべきものがないと説き,これを空という。この思想は特に般若経典に多く説かれ,また,ナーガールジュナ (龍樹,150頃~250頃) によって体系化された。彼によると,この世のすべてのものは,本質的に空である (真諦) が,それを相対的な日常的立場からは存在とみる (俗諦) 。彼の思想は,その弟子アーリヤデーバ (提婆) に継承され,やがて中国,日本に伝えられ,三論宗となった。
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空〔曲名〕
日本のポピュラー音楽。歌は女性シンガーソングライター、五輪(いつわ)真弓。1986年発売。
空〔詩集〕
岩瀬正雄による詩集。1999年刊行(須永書房)。2000年、第18回日本現代詩人賞を受賞。
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空 (ウツボ)
植物。ユリ科の多年草,園芸植物,薬用植物。ネギの別称
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報