空間格子
くうかんこうし
space lattice
同一平面上にない3本の基本ベクトルa、b、cをとるとき、位置ベクトルは、
r=n1a+n2b+n3c
(n1,n2,n3は任意の整数)
で位置が与えられる点のつくる三次元的配列を空間格子といい、おもに結晶構造の表現に用いられる。結晶格子あるいはこれを分類したフランスのブラベAuguste Bravais(1811―1863)の名によってブラベ格子Bravais latticeともよばれる。合金では、低温相の結晶格子を規則格子super latticeという。
n1、n2、n3が0か1となる8種の組合せによって定まる点を結ぶと平行六面体ができる。これを単位格子または単位胞unit cellとよび、基本ベクトルの長さ(周期)a、b、cおよびそれらの間でつくる角(軸角)α=∠(b, c)、β=∠(b, a)、γ=∠(a, c)の6種の量を格子定数lattice constantという。単位格子は結晶構造の基本単位であり、基本ベクトルに沿った方向(結晶軸)の並進(平行移動)によって結晶構造全体が示される。a、b、cは結晶格子の基本周期である。これらの格子定数の間に成立する関係によって、7種の結晶系に分類される。1850年ブラベは、これらの結晶系に対応する空間格子を14種に分類した(図)。
[岩本振武 2015年8月19日]
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空間格子
くうかんこうし
space lattice
同一平面上にない 3個の基本ベクトル(並進ベクトルという)a,b,c により r(n1,n2,n3)=n1a+n2b+n3c(n1,n2,n3は任意の整数)で表わされる格子点の配列を空間格子という。結晶では同等の原子あるいは原子団が格子状に周期的に配列するので,その配列を空間格子によって表わし,結晶格子と呼ぶ。その際,並進ベクトルは通常は結晶軸の向きにとる。空間格子のベクトル r(n1,n2,n3)は[n1n2n3]と表わす。その際 -n1を
で表わす。n1,n2,n3の符号が異なる r が対称性によって同等である場合,それらを総称して〈n1n2n3〉と表わす。格子点によってつくられる格子面はミラー指数によって表わす。a,b,c を辺とする平行六面体を単位胞(または単位格子)と呼び,a,b,c の大きさ a,b,c と,それらのなす角α,β,γを合せて格子定数という。空間格子の特徴は単位格子と格子定数によって代表される。空間格子は 1850年に A.ブラベによって 14種に分類された。これはブラベ格子と呼ばれ,単位胞の各頂点を格子点とし,n1,n2,n3が整数の空間格子を単純格子という。このほかに,単純格子の相対する底面の中央にも格子点のある底心格子,各面の中央にも格子点のある面心格子,中心にも格子点のある体心格子を加え,結晶系と対応させている。
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空間格子
クウカンコウシ
space lattice
独立した三つの空間ベクトルの一次結合の並進がつくる格子構造.空間中に任意の1点Pをとり,Pに対して同一平面上にない三つのベクトルa,b,cの一次結合pa + qb + rc(p,q,rは0または正負の任意の整数)で表されるベクトルの並進をほどこして得られる点の集合は,空間的に三次元の格子構造をつくるので,これを空間格子とよび,空間格子をつくる各点を格子点とよぶ.結晶に関しては,これを結晶格子とよび,格子点は結晶の周期の並進で関係づけられる等価な点を表すから,結晶の周期性を結晶格子で代表させることができる.空間格子には単純格子と複合格子とがある.また,格子の対称性によって,三斜,単斜,斜方,正方,りょう面体,六方および立方の7種類の型に分類することができる.[別用語参照]結晶系,単位格子,ブラベ格子
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
空間格子【くうかんごうし】
立体的網目状格子で,点から点へは並進操作(並進運動)の繰返しで移れるような幾何学的構造。格子点(網目の交点)に原子をおけば,結晶原子の空間的配列の周期性がこれで表される。対称性によって14種に分類され,これを14のブラベ格子という。→結晶格子
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デジタル大辞泉
「空間格子」の意味・読み・例文・類語
くうかん‐ごうし〔‐ガウシ〕【空間格子】
ある規則に従って配列され、それが周期的に繰り返されている三次元の点の配列のこと。結晶をつくる原子の配列については結晶格子ともいう。
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くうかん‐ごうし ‥ガウシ【空間格子】
〘名〙 結晶体の
因子である原子、
イオン、分子集団などが
一定の
系列にしたがって空間に配列されたもの。
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世界大百科事典内の空間格子の言及
【結晶】より
…例えば図7のaは大円で表した原子と,その向かって左下側にある小円の原子との1組で構成単位を形成して,この単位が前後・左右・上下にそれぞれの方向ごとに定まったある間隔で繰り返して互いに平行に並んでいる結晶構造を示す。
[結晶格子]
これらの単位は図7のaに便宜的に描いた破線の枠に従って配列しているとみることができるので,bのようにこの枠(これを空間格子,結晶格子あるいは単に格子という)を取り出して,それが限りない広がりをもつと理想化して考えることにする。bの前後・左右・上下の3線の交点を格子点という。…
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