精選版 日本国語大辞典 「空中給油」の意味・読み・例文・類語
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飛行中の航空機からほかの航空機へ燃料を移し、長距離の飛行を可能にするための補給を行うこと。世界最初の空中給油は、1930年にアメリカで行われ、一部では実用化されていたが、多用されるようになったのは、燃料消費の多いジェット機が軍用機の主力となってからである。空中給油は、基本的には長距離の移動や侵攻攻撃に際して、航続距離を延長するために使われる。防空戦闘では、滞空時間を延長するために使われることも考えられているが、実際にはほとんど使われた例はない。
空中給油のシステムでは、専用の空中給油母機を使う方法と、攻撃機などに空中給油用の装置を搭載するバディ・システムとよぶ方式があり、大規模な使用では前者が、小規模な部隊では後者が使われるのが普通である。燃料の移送方式には、ブームを給油を受ける機体に差し込むフライング・ブーム方式と、燃料ケーブルにバケットをつけ、給油を受ける機体がプローブでとらえる、プローブ・アンド・ドローグの2方式が一般的。このうちフライング・ブームはおもにアメリカ空軍が現在使用しており、アメリカ海軍やそのほかの軍は、バディ方式も含めてプローブ・アンド・ドローグで給油を行っている。またプローブ・アンド・ドローグでは、ヘリコプターに空中給油を行うこともできるようになった。
[青木謙知]
飛行機の航続距離や航続時間を延ばすため,飛行中の飛行機に燃料を補給すること。空中給油は,1923年アメリカ陸軍が実験に成功して以来,記録の達成など特殊な目的のため使用されたが,ジェット機の時代になり,その大きな燃料消費を補うため,戦略爆撃機,戦闘爆撃機および艦上機などに対し,常用されるようになった。空中給油を行う母機は空中給油機tankerと呼ばれ,大型の燃料タンクと給油装置をもち,輸送機などを原型として作られたものが多い。現代の空中給油の方式には2種類ある。一つはイギリスの開発したプローブ・ドローグprobe-drogue方式で,この方式では空中給油機は,尾部または翼端からドローグ(先端に給油口のあるホース)を下ろす。給油を受ける飛行機は,プローブという受油棒をもっており,給油機の後ろから接近して,このプローブを給油口に差し込み,給油を受ける。同時に2~3機に給油可能である。他の方式はアメリカの開発したフライング・ブームflying boom方式と呼ばれるもので,この方式では,給油を受ける飛行機は胴体上部に特別な受油口をもち,給油機の後ろ下方に接近する。給油機は,尾部からフライング・ブーム(先に小翼のついた管)を下ろし,後部にいる操作員が飛行機を見ながら,ブームの先の小翼を操作することによってブームの位置を動かし,受油口にこれを差し込み給油する。同時に1機しか給油できないが,給油量は大きい。
執筆者:鷹尾 洋保
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